【令和2年分 確定申告】個人事業者の申告(事業所得)

【令和2年分 確定申告】個人事業者の確定申告(事業所得)

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年12月22日

個人事業者の確定申告(事業所得)について税理士が解説します
令和2年分の個人事業者の確定申告について教えてください。
個人事業者は令和2年中に生じた利益を計算し、事業所得として確定申告を行います。青色申告者と白色申告者では税務署に提出する書類が異なります。また、所得税額の計算の際に所得控除などを考慮することができます。

個人事業者の方は、記帳・決算を行い、青色決算書または収支内訳書を作成した上で、確定申告書を作成・提出する必要があります。

また、一定の場合には消費税の確定申告も必要となります。例えば、前々年分の課税売上高が1000万円を超える場合は消費税の確定申告が必要となります。

それでは個人事業者の確定申告について概要を見ていきます

(注) 説明については、国税庁のホームページを参考にこれを加工してできるだけ分かりやすく作成しています。そのため割愛している部分もあります。より詳しい内容をご覧になりたい場合は次のリンクから国税庁のホームページをご確認ください。

国税庁ホームページ
事業所得の課税のしくみ(事業所得)

国税庁ホームページ
令和2年分の確定申告に関する手引き等

令和2年分の改正点

まずは令和2年分 確定申告の改正点を見ていきます。

青色申告特別控除の変更

令和元年分までは、次の要件を満たすと、事業所得、不動産所得から合計で最高65万円を控除することができました。令和2年分からは次の要件を満たしただけでは最高55万円の控除となります。

・青色申告者であること

・不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること

・複式簿記により記帳していること

・確定申告書への貸借対照表などの添付および金額の記載

・期限内申告をすること

令和2年分からは、上記の要件に加え次のいずれかの要件を満たした場合には最高で65万円の控除が受けられます。

・仕訳帳および総勘定元帳について電子帳簿保存を行う

・所得税の申告をe-Tax(国税電子申告・納税システム)で行う

令和2年分 確定申告のその他のおもな改正点

・基礎控除の引き上げ

・給与所得控除の引き下げ

・公的年金等控除の引き下げ

・所得金額調整控除の創設

・扶養控除、配偶者(特別)控除の変更

・ひとり親控除の創設、寡婦控除の見直し

おもな改正点については次の記事で解説しています。

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【令和2年分 確定申告】おもな改正点

事業所得とは

事業所得とは事業から生ずる所得です。事業とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などが該当します。

ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得には該当せず、原則として不動産所得や山林所得になります。

事業所得の計算方法

事業所得の金額は、次のように計算します。

総収入金額 - 必要経費 = 事業所得の金額

総収入金額になるもの

総収入金額になるものには、次のようなものがあります。

(1) 事業から生ずる売上金額

(2) 商品を自家用に消費した場合や贈与した場合のその商品の価額

(3) 空箱や作業くずなどの売却代金

(4) 仕入割引やリベート収入

(5) 商品などの棚卸資産について損失を受けたことにより支払を受ける保険金や損害賠償金等

(6) 金銭以外の物や権利その他の経済的利益の価額、など

持続化給付金感染拡大防止協力金は収入金額に算入します。

必要経費になるもの

必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のことをいい、例えば、次に掲げるようなものがあります。

売上原価、租税公課、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、修繕費、消耗品費、減価償却費、福利厚生費、給料賃金、外注工賃、利子割引料、地代家賃、など

なお、家事上の経費(※)は必要経費になりませんが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費の金額は必要経費となります。

例えば、自宅兼事務所の場合の水道光熱費が該当します。支払っている水道光熱費のうち、仕事に使っている割合の金額を必要経費として計上できます

(※)事業とは関係のない生活費などのことです。

必要経費の特例

(1) 家内労働者等の所得計算の特例

家内労働者等とは、外交員、集金人、電力量計の検針人などの業務をする人をいいます。

家内労働者等については、必要経費の額が55万円に満たない場合には、最高55万円まで必要経費とすることができる特例があります。

例えば、必要経費として30万円しか支払っていな場合でも、55万円を必要経費とすることができます。

(2) 事業に専ら従事する親族がある場合の必要経費の特例

事業主が生計を一にする配偶者や親族に支払う給料などは、原則として必要経費に算入できません。

ただし、一定の要件に該当する場合には、それぞれ次のように取り扱われ、必要経費に算入することができます。

① 青色申告者の場合(青色事業専従者給与)

次の場合には、事業主はその給与の額のうち労務の対価として適正な金額を事業所得の必要経費に算入することができます。

(イ) 事業主と生計を一にする配偶者や親族が、事業主の事業に従事することができると認められる期間の1/2を超える期間、その事業に専ら従事した

(ロ) 税務署長に提出された届出書に記載された範囲内の給与の支払を受けたこと

(ハ) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること、など

この適用を受ける場合には、期限までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。この届出書については次の記事で解説しています。

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注意点として、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は「控除対象配偶者」や「扶養親族」になることができません。

② 白色申告者の場合(事業専従者控除)

次の場合には、事業主は親族1人につき最高 50万円(配偶者の場合には最高 86万円)を必要経費とみなして、事業所得の計算をすることができます。

(イ) 事業主と生計を一にする配偶者や親族が、事業主の事業にその年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事した

(ロ) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること、など

減価償却資産について

(2) 10万円未満の資産

使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします。

これに対して、10万円以上の資産(パソコン、プリンター、エアコンなどの器具備品、機械など)を購入した場合は、原則として、購入した年に全額を経費計上することはできません。資産計上をしたうえで減価償却を行うことになります。

減価償却とは、例えば、1月に20万円のパソコンを買った場合には、4年に渡って毎年5万円ずつ経費に計上していきます。このようにその資産の耐用年数(国が定めたその資産を使用できる年数)によって、毎年、経費計上することを減価償却といいます。

この原則に対して、次の2つの特例的な取扱いがあります。

(2) 一括償却資産

10万円以上 20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下で取得価額の合計額の3分の1ずつを、減価償却費として毎年の必要経費に計上することができます。

(3) 少額減価償却資産(30万円未満)の特例

青色申告承認申請書を提出している場合には、10万円以上 30万円未満の資産について、購入した年に全額を必要経費にすることができる特例があります。この特例を受けるためには、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に一定の事項を記載して確定申告書に添付するなどの要件や、1年あたりの限度額などがあります。

確定申告書の提出

確定申告書の種類

確定申告書には確定申告書A確定申告書Bがあります。

事業所得の場合には「確定申告書B」を使用します。

(参考:確定申告書B 第一表)

損失を翌年以後に繰り越す場合などには、第四表(損失申告用)も合わせて提出します。

(参考:第四表(一))

(出典:国税庁ホームページ

青色申告決算書、収支内訳書

確定申告書Bに青色申告決算書(一般用)または収支内訳書(一般用)を添付します。

青色申告者は「青色申告決算書(一般用)」を、白色申告者は「収支内訳書(一般用)」を添付します。

(参考:青色申告決算書(一般用) 1ページ目)

(出典:国税庁ホームページ

(参考:収支内訳書(一般用) 1ページ目)

(出典:国税庁ホームページ

提出方法

申告書は次のいずれかの方法で提出します。

① e-Taxで申告

 ⇒ 国税庁ホームページで作成した申告書等は、e-Taxで送信できます。

② 郵便又は信書便により申告書を税務署に送付

③ 住所地等の所轄税務署の受付に申告書を提出

 ⇒ 税務署の時間外収受箱への投函により、提出することも可能です。

申告期限

令和2年分の確定申告の申告期限は次のとおりです。

令和3年3月15日(月)

※ 新型コロナウィルス感染症の影響で申告期限が変更される可能性があります。

所得税の納付

納付方法

次のいずれかの方法で納付します。

1、振替納税

指定した金融機関の口座から、納税額が自動的に引き落とされる制度です。

振替納税を利用する場合には、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(振替依頼書)」に必要事項を記載し、期限までに税務署に提出する必要があります。

2、e-Taxで納付する

自宅からインターネットを利用して納付できます。
e-taxには「ダイレクト納付」「インターネットバンキング」があります。

・ダイレクト納付 … e-Taxによる操作で預貯金口座からの振替により納付する方法です。

・インターネットバンキング … インターネットバンキング等から納付する方法です。

3、クレジットカードで納付する

インターネットを利用して専用のWeb 画面から納付できます。

4、QRコードによりコンビニで納付する

ご自宅などで、確定申告書等作成コーナーやコンビニ納付用QRコード作成専用画面から納付に必要な情報をQRコードとして作成(印刷)し、コンビ二エンスストアで納付できます。納付できる金額は30万円以下となります。

5、金融機関又は税務署の窓口で現金で納付する

金融機関又は税務署の窓口で、納付書により現金で納付する方法です。
納付書をお持ちでない方は税務署で入手できます。金融機関で用意してある場合もあります。

納期限

令和2年分の確定申告の納期限は次のとおりです。

令和3年3月15日(月)

ただし、振替納税を利用している場合の納期限(振替日)は令和3年4月19日(月)となります。

還付の場合

(確定申告書 第一表 右下)

確定申告書 第一表の「還付される税金の受取場所」に、還付金を受け取る銀行口座等の情報を記載することにより、その口座に還付金が振り込まれます。

ただし、一部のインターネット専用銀行については、還付金の振込みができないため、振込みの可否について、あらかじめご利用のインターネット専用銀行に確認します。

所得控除について

所得控除とは、所得税額を計算するときに各納税者の個人的事情を加味するためのものです。事業所得の場合には、事業所得が計算された後に所得控除の額を差し引くことができます。

所得税額は、その残りの金額を基礎として計算されます。

所得控除については次の記事で解説しています。

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