この記事について
「法人成り ①」から「法人成り ⑨」までをまとめ、加筆したものを2020年12月10日に掲載しました。次のリンクから最新の記事をご覧ください。
法人成りについて8回にわたって見てきました。最終回の今日は、これまでに紹介したもの以外で、個人事業と法人で異なる点などについていくつ挙げてみます 。
交際費
法人の場合は、交際費を支出しても全額を損金とすることはできずに、限度額が設けられています。具体的には、次の①又は②のいずれかの金額が損金に算入できません。
① 年800万円を超える部分の金額
② 交際費等の額のうち、飲食その他これに類する行為のために要する費用(一定のものを除く)の50%に相当する金額を超える部分の金額
(注)期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人を前提としています。
これに対して個人の場合は、法人のような限度額は設けられていません。
出張手当
法人の場合は、旅費規程を整備するなど一定の要件を満たせば、出張手当を支給することができます。出張手当が妥当な金額であれば、法人側では損金になり、もらった役員や従業員の側では所得税がかかりません。
これに対して個人の場合は、個人事業主自身に出張手当を支払ったとしても、その事業所得の必要経費とはなりません。もちろん個人事業主であっても、交通費や宿泊費などの実費は必要経費になります。
生命保険
法人の場合、法人を契約者、役員や従業員を被保険者として様々な生命保険に加入することができます。保険の種類によって、支払った保険料のうちいくらを損金にできるかは異なります。
個人の場合、個人事業主自身が生命保険契約に加入し保険料を支払ったとしても、原則として事業所得の必要経費にはできません。最高で12万円の生命保険料控除が受けられるだけとなります。
まとめ
全9回にわたって個人事業と法人の税務面での相違点を見てきました。
法人成りは、主に節税の観点から検討することが多いと思います。法人成りにはデメリットもあることを知っておきましょう。
・法人設立の費用がかかる
・法人税等の申告は、個人の確定申告と比べて複雑
・法人は赤字の場合でも毎年かかる税金(均等割)がある
・法人を解散することになったときに費用がかかる
これらのデメリットがあるとしても、節税の面や、法人の信用力の高さにおいてメリットがあります。個人事業を営んでいて、そろそろ法人にしたいと考えている方は、ぜひ当事務所までご連絡ください。
最後に今日のポイントをまとめます。
② 法人成りには設立費用がかかり、申告に手間がかかるなどのデメリットがあるが、法人は個人事業と比較し節税や信用力の高さなどのメリットも多い。
それではまた次回よろしくお願いします。
(公開日:2020年12月8日)