また、「住宅ローン控除」と「すまい給付金」について教えてください。
住宅ローン控除は、銀行借入をしてマイホームを購入した場合に、一定額を所得税と住民税から控除できる制度です。
すまい給付金は、マイホームを購入し、かつ一定の要件を満たすと給付金を受け取れる制度です。
まずはそれぞれの概要です。
(1) マイホームの取得にかかる税金
マイホームを購入した際にかかる税金には、売買契約書に貼る印紙代や、不動産登記の際の登録免許税などがあります。不動産取得税についてはマイホームの取得の場合にはかからないことがあります。
(2) 住宅ローン控除
マイホーム取得のための資金を銀行から借入れて購入資金に充てた場合には、住宅ローン控除の適用が考えられます。住宅ローン控除は一定額を所得税や住民税から控除できる制度です。
適用を受けるためには確定申告が必要です。
(3) すまい給付金
すまい給付金はマイホームを取得した際に最大50万円の給付金を受け取れる制度です。要件の1つに、マイホームの売買に消費税がかかっていることが挙げられます。
それでは順に見ていきましょう。
※ 新型コロナウィルスの影響により期限などが変更になっている場合があります。国税庁や市区町村などのホームページから最新情報の確認ができます。
※ 以下に記載した税額及び税率はケースにより異なることがあります。
マイホームを購入した際にかかる税金
マイホームの中でも特にマンションを購入する際にかかる税金を見ていきます。
印紙税
(参考:収入印紙)

(出典:国税庁)
(1) 売買契約書にかかるもの
マンションを購入する際は売主と買主で売買契約を交わし、その契約書に収入印紙を貼ります。仮にマンションの金額が4,000万円の場合、印紙代は1万円(※1)となります。
印紙税は、印紙を購入し契約書に貼ることで納付しますが、印紙を貼っただけでは納めたことにならず、消印(印紙と下の契約書にまたがって押す印)が必要です。消印をすることで、印紙がすでに使用済みであることが分かり、再使用を防止しています。
(※1)本則は2万円ですが、2022年3月31日まで税額が軽減されています。
(2) 住宅ローン契約書にかかるもの
マンションを購入する場合、購入代金を現金一括で支払うことはあまりなく、通常は住宅ローンを利用することが多いです。そのときに銀行等(貸主)と住宅ローンの契約を結び、その契約書に収入印紙を貼ります。仮に借入金の金額が3,000万円の場合、印紙代は2万円(※2)となります。
(※2)契約書が1通の場合
登録免許税
(1) 所有権保存登記にかかるもの
マンションを購入した場合、法務局へ不動産登記を行います。不動産登記とは、不動産の所有者が誰なのかをはっきりさせ、不動産取引を安全かつ円滑に行うことを目的としている制度です。この不動産登記をする際に、登録免許税という税金を納めます。
登録免許税は、以下の①と②の合計額となります。
① 建物の固定資産税評価額 × 0.15%(※3)② 土地(敷地権)の固定資産税評価額 × 1.5%(※4)
固定資産税評価額とは、各市町村(東京都23区の場合は都)が算定するもので、固定資産税、都市計画税や不動産取得税などの税金を計算する際の基準にもなっています。
(※3)2022年3月31日までの登記に適用される住宅の特例税率
(※4)2021年3月31日までの登記に適用される税率(本来の税率は2%)
抵当権の設定とは、銀行等から住宅ローンなどで借入れをしたときに、建物と土地に担保権を設定することです。この登記のことを抵当権設定登記といいます。
これにより、銀行等は住宅ローンの返済が滞って返済が困難であると判断した場合、一定の手続きのうえ、建物と土地を競売にかけて貸付金(住宅ローン)の回収を図ります。
この登記をする際に、登録免許税という税金を納めます。借入金の額が3,000万円の場合、税額は3万円(※5)です。
(※5)住宅用家屋の軽減税率0.1%を適用した場合
不動産取得税
不動産を取得した際に、一度だけかかる税金です。税額はマンションの固定資産税評価額×3%(※6)です。ただし、住宅と土地には軽減措置があるため税額が0円となる場合もあります。
東京都の場合、軽減措置を受けるためには、マンションを取得後一定の期日までに「不動産取得税申告書」と添付書類を所轄の都税事務所等に提出します。
(※6)税率は原則4%ですが、2021年3月31日までに取得した不動産の場合は特例措置により3%になっています。
その他の税金および諸経費
(1) 固定資産税固定資産税は、厳密には不動産の取得時にかかる税金ではありません。毎年1月1日時点で不動産を所有している人に対して課税されます。固定資産税は土地・家屋の課税標準額(固定資産税評価額に一定の調整を加えたもの)に1.4%の税率を乗じて計算します。
また、都市計画法による都市計画区域のうち、原則として市街化区域内に所在する土地及び家屋については都市計画税もかかり、土地・家屋の課税標準額に最高で0.3%の税率を乗じて計算します。
(2) 税金以外の諸経費マンションの取得に際しての税金以外の諸経費をいくつか挙げてみます。
・仲介手数料
・融資手数料
・ローン保証料
・火災保険料、地震保険料
・司法書士への登記手数料など
マンション購入の諸経費については税金も含め様々ありますが、おおよそ物件価格の7~10%程度が目安と言われているようです。マンション購入の際は諸経費も含め、余裕を持って購入資金の準備をしましょう。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
概要
マイホームを購入する際に、金融機関から借入れをして取得資金に充てることも多いと思います。この場合に、借入金の金利負担を軽減するために住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の制度が設けられています。
住宅ローン控除とは、借入れをしてマイホームを購入した場合に、納めた税金(所得税、住民税)のうち一定額が戻ってくる制度です。この制度を受けるためには確定申告書を提出することが必要です。
また、住宅ローン控除は一定の増改築等の場合にも適用できる場合があります。
要件
※ 令和2年中に居住の用に供したものとして説明をしています。
※ 認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例については説明を割愛しています。
控除を受けるための主な要件は次のとおりです。
① 自分が居住する住宅の購入であること② 住宅の床面積が50㎡以上であること
→ 登記簿上記載されている床面積で判定する
→ 床面積の2分の1以上の部分が専ら自分の居住部分でなければならない
③ 住宅取得後 6か月以内に居住し、住宅ローン控除の適用を受けようとする年の12月31日まで引き続き住んでいること
④ 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
→ 親族や知人からの借入金など、対象にならない借入金がある
⑤ 入居した年とその前2年間およびその後2年間(※7)に「居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円の特別控除)」や「特定の居住用財産の買換え等の特例」などを受けていないこと
⑥ 住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
(※7)譲渡の時期によっては「その後3年間」となります。
中古住宅の取得の場合
取得した住宅が中古住宅の場合、次の要件も加わります。
⑦ 新築後20年以内の中古住宅であること(マンションなどの耐火建築は25年以内)⑧ 上記⑦に該当しない場合には、一定の要件を満たすこと
「住宅借入金等特別控除チェック表」が国税庁のホームページに掲載されています。控除が受けらるかの参考にしてみてもいいでしょう。

(出典:国税庁ホームページ)
住宅ローン控除額
控除を受けられる金額は、「特定取得」と「特別特定取得」で異なっています。
特定取得
住宅を取得した場合に、建物部分にかかる消費税率が「8%又は10%」であったときの取得をいいます。
特別特定取得
住宅を取得した場合に、建物部分にかかる消費税率が「10%」であったときの取得をいいます。
前提として住宅を購入した場合、消費税がかかるときと、かからないときがあります。具体的には売主が「法人」の場合は建物部分に消費税がかかり、売主が「個人」の場合には消費税はかかりません。
仲介業者が不動産会社(法人)でも、売主が個人であれば消費税はかかりません。
(1) 特別特定取得の場合特別特定取得の場合、控除できる年数は最大13年となっています。
① 1~10年目 年末残高等×1% 上限40万円
② 11~13年目 年末残高等×1% 上限40万円(一定の算式による上限あり)
「年末残高等」の金額は、金融機関から送られてくる「年末残高証明書」で確認できます。その年末残高が3,000万円の場合、控除額は以下のとおりです。
3,000万円 × 1% = 30万円
例えば、令和2年中に給与所得から源泉徴収された所得税額が50万円ある場合、上記の30万円をこの所得税額50万円から控除することができます。
※ 「住宅の取得等の対価の額又は費用の額」が「年末残高等」の金額よりも少ないときは、その取得等の対価の額又は費用の額となります。また、その取得等の対価の額又は費用の額からは、住宅の取得等に関し一定の贈与を受けた額や補助金等の額を控除します。(以下同様)
(2) 特別特定取得に該当しないが、特定取得に該当する場合
この場合、控除できる年数は最大10年となっています。
1~10年目 年末残高等×1% 上限40万円
(3) 特別特定取得、特定取得のいずれにも該当しない場合この場合、控除できる年数は最大10年となっています。
1~10年目 年末残高等×1% 上限20万円
確定申告について
(参考:(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書)

(出典:国税庁ホームページ)
住宅ローン控除を受けるには、確定申告をする必要があります。確定申告書に必要書類を添付して提出します。必要書類の一例は次のとおりです。
・土地、家屋の登記事項証明書
・売買契約書の写し
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、など
会社員の場合、確定申告が必要なのは1年目だけです。2年目からは会社に必要書類を提出すれば、年末調整の際に控除をしてくれます。
還付される税金について
住宅ローン控除は、納めた「所得税」を限度に控除ができるものです。したがって、「年末借入金残高が3,000万円」で「控除額が30万円(3,000万円 × 1%)」の場合に、納めた所得税が20万円であれば、20万円までしか控除はできません。
ただし、控除しきれなかった金額については、一定額を「住民税」から控除することができます。
新型コロナウイルス感染症等の影響による入居期限の特例
上記の住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合においては、通常10年である控除期間が13年に延長される特例が措置されています。
ただし、新型コロナウイルス感染症等の影響により、控除の対象となる住宅の取得等をした後、その住宅への入居が入居の期限(令和2年12月31日)までにできなかった場合でも、次の要件を満たすときには、その特例の適用を受けることができます。
① 一定の期日(※8)までに、住宅の取得等に係る契約を締結していること
② 令和3年12月31日までに住宅に入居していること
(※8) 新築については令和2年9月30日、中古住宅の取得等については令和2年11月30日
すまい給付金
(参考:すまい給付金リーフレット)

(出典:すまい給付金事務局リーフレット)
概要
すまい給付金は住宅の取得に際し給付金が支払われる制度です。したがって、この制度は、住宅ローン控除のような税金の優遇措置ではありません。
給付額は最大で50万円となっています。
要件
新築住宅も中古住宅も対象となります。ただし、指定の検査を受けるなど、住宅の品質や耐震性等が確認できることが条件となっています。また、住宅の売買に消費税が課税されていることも条件となっています。
対象となる住宅の要件は次のようになっています。
新築住宅(注1) | 中古住宅 | |
住宅ローン(注2)利用者の要件 | ・自らが居住する ・床面積が50㎡以上 ・工事中の検査により品質が確認された次の住宅 ① 住宅瑕疵担保責任保険に加入 ② 建設住宅性能表示制度を利用 等 |
・売主が宅地建物取引業者である ・自らが居住する ・床面積が50㎡以上 ・売買時等の検査により品質が確認された次の住宅 ① 既存住宅売買瑕疵保険(注4)に加入 ② 既存住宅性能表示制度を利用(耐震等級1以上に限る) ③ 建設後10年以内で、新築時に住宅瑕疵担保責任保険に加入 または建設住宅性能表示制度を利用 |
現金取得者の追加要件 | 上記の住宅ローン利用者の要件に加えて ・フラット35Sの基準(注3)を満たす ・50歳以上(住宅を引渡された年の12月31日時点) ・収入額の目安が650万円以下 (都道府県民税の所得割額が13.30万円以下) |
上記の住宅ローン利用者の要件に加えて ・50歳以上(住宅を引渡された年の12月31日時点) ・収入額の目安が650万円以下 (都道府県民税の所得割額が13.30万円以下) |
(注1)新築住宅は、工事完了後1年以内、かつ居住実績のない住宅
(注2)住宅ローンとは、住宅取得のために金融機関等から行った償還期間が5年以上の借入れを言います。
(注3)耐震性(免震住宅)、省エネルギー性、バリアフリー性または耐久性&可変性のいずれかに優れた住宅
(注4)中古住宅の検査と保証がセットになった保険
(出典:すまい給付金事務局リーフレット)
給付額
給付額は一定の算式により計算されます。
(算式)給付額 = 給付基礎額 × 持分割合
給付基礎額は収入額によって異なりますが、最大額は次のとおりです。
・住宅の売買にかかる消費税率が8%の場合 ⇒ 最大 30万円
・住宅の売買にかかる消費税率が10%の場合 ⇒ 最大 50万円
収入額は、市区町村が発行する課税証明書(市区町村によって名称が異なる可能性があります)に記載される都道府県民税の所得割額で確認します。
持分割合は、建物の登記事項証明書(権利部)で確認します。
【当事務所へのご依頼・お問合わせ】
今回はマイホームの購入に関する税金について解説しました。
このうち住宅ローン控除を受けるには、確定申告書に一定の書類を添えて税務署に提出しなければなりません。この申告はご自身でも十分可能ですが、手間と時間がかかるものです。
もし税理士に任せたい場合には、当事務所でも住宅ローン控除の申告を承っております。
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どうぞお気軽にご相談ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。