個人事業主が納める税金

個人事業主が納める税金

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年12月1日
 
個人事業主が納める税金について税理士が解説します
 
個人事業主が納める税金には、どのようなものがあるのか教えてください。
 
個人事業主が納める税金には、次の5つがあります。
① 所得税
② 消費税
③ 住民税
④ 個人事業税
⑤ 償却資産税

これ以外に付随的なものとして、車両を所有すれば自動車税等が、接待でゴルフをすればゴルフ場利用税などもかかっています。

個人事業主が納める主な税金は次の5つになります
ただし、この中には事業の状況によってはかからない税金もあります。

① 所得税
② 消費税
③ 住民税
④ 個人事業税
⑤ 償却資産税

これらの税金を、申告が必要かどうかで分類すると次のようになります

1、原則として申告が必要なもの … 所得税
2、場合によって申告が必要なもの … 消費税、償却資産税
3、所得税の申告をすれば、申告不要なもの … 住民税、個人事業税

それでは順に見ていきます。

※ 新型コロナウィルスの影響により申告期限や納期限が延長になっている場合があります。国税庁や市区町村などのホームページから最新情報の確認ができます。

所得税

所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。
まず、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いて課税所得を計算し、これに税率を乗じて税額を計算します。

個人事業の場合、事業から生じた所得(もうけ)に対して税金がかかります。

業績が黒字でも赤字でも、原則として申告は必要になります。

計算方法

1年間に支払う所得税額を求めるには、事業所得以外の所得も考慮しなければなりません。なぜならば所得税を計算するには、他の所得も合算して税率を乗じるためです。

ここでは所得を事業所得のみと仮定して、所得税額の大まかな計算方法をご紹介します。

1、所得税額の大まかな計算方法

(1) 暦年(1月~12月)の事業所得(利益)を計算します。事業所得の計算式は次のとおりです。

(計算式)総収入金額 - 必要経費 = 事業所得の金額

(2) 事業所得の金額から各種控除を差し引き所得金額を求めます。

(3) 求めた所得金額に税率を乗じて所得税額を算出します。

2、所得税率について

所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる超過累進税率を採用しています。

(所得税の速算表)

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

(出典:国税庁ホームページ)

(注)例えば「課税される所得金額」が7,000,000円の場合には、求める税額は次のようになります。⇒ 7,000,000円 × 0.23 - 636,000円 = 974,000円

このように、現在の所得税率は5% ~ 45%となっていて、最高税率だと所得税だけで所得の半分程度の税金を納付することになります。
また令和19年までは「復興特別所得税(所得税額 × 2.1%)」が所得税額に加算されます。

申告方法

(参考:確定申告書B)

(出典:国税庁ホームページ)

1、申告

毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税を計算し、翌年3月15日(※1)までに申告します。

(※1)申告期限が土曜日、日曜日、国民の祝日・休日の場合は、その翌日が申告期限となります。

2、申告書の提出方法

① e-Taxで申告

 ⇒ 国税庁ホームページで作成した申告書等は、e-Taxで送信できます。

② 郵便又は信書便により申告書を税務署に送付

③ 住所地等の所轄税務署の受付に申告書を提出

 ⇒ 税務署の時間外収受箱への投函により、提出することも可能です。

納付方法

1、振替納税

指定した金融機関の口座から、納税額が自動的に引き落とされる制度です。

振替納税を利用する場合には、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(振替依頼書)」に必要事項を記載し、期限までに税務署に提出する必要があります。

2、e-Taxで納付する

自宅からインターネットを利用して納付できます。
e-taxには「ダイレクト納付」「インターネットバンキング」があります。

・ダイレクト納付 … e-Taxによる操作で預貯金口座からの振替により納付する方法です。

・インターネットバンキング … インターネットバンキング等から納付する方法です。

3、クレジットカードで納付する

インターネットを利用して専用のWeb 画面から納付できます。

4、QRコードによりコンビニで納付する

ご自宅などで、確定申告書等作成コーナーやコンビニ納付用QRコード作成専用画面から納付に必要な情報をQRコードとして作成(印刷)し、コンビ二エンスストアで納付できます。納付できる金額は30万円以下となります。

5、金融機関又は税務署の窓口で現金で納付する

金融機関又は税務署の窓口で、納付書により現金で納付する方法です。
納付書をお持ちでない方は、税務署で入手できます。金融機関で用意してある場合もあります。

納期限は3月15日(※2)です。
ただし、振替納税を利用している場合は、これよりも後に口座から引き落としがあります。振替日については、国税庁のホームページより確認ができます。

(※2)納期限が土曜日、日曜日、国民の祝日・休日の場合は、その翌日が納期限となります。

必要経費になるか

所得税の納付は事業所得の金額の計算上、必要経費になりません。

事業が赤字の場合

個人事業が赤字になった場合で、青色申告をしているときは、その赤字を翌年以後3年にわたって繰越せる「純損失の繰越控除」という制度があります。

事業所得の金額の計算上生じた赤字は、まず、他の黒字の所得と損益通算できます。損益通算しきれなかった赤字の金額は、赤字が発生した年の翌年以後3年間に渡って繰り越すことができます。

具体例で簡潔に説明します。所得が事業所得のみの場合で、初年度に100万円の赤字が生じたと仮定しましょう。

翌年が30万円の黒字の場合、初年度に生じた赤字100万円のうち、70万円(赤字 100万円-黒字30万円)が控除しきれないことになりますね。そのため、この70万円は翌々年に繰越せます。

翌々年でも黒字から控除しきれないときは、翌々々年まで繰り越すことができます。

消費税

消費税とは、消費一般に広く課税される税金です。消費者が負担した消費税を、事業者がいったん預かり国に納付します。

個人事業者の場合、原則として、前々年の売上高が1,000万円を超えていると消費税の納税義務者となり、本年分の申告・納付が必要になります。

納付の場合だけでなく、消費税の還付を受ける場合にも申告書の提出が必要となります。

消費税の計算方法には「本則課税」と「簡易課税」があります。

計算方法

1、本則課税

「預かった消費税額」から「支払った消費税額」を控除して、残額を国に納付します。本則課税の場合は、「支払った消費税額」のほうが大きいときには、消費税の「還付」を受けることができます。

ちなみに、消費税は赤字でも納付になる場合があります。例えば、給与の支払いが多い場合です。給与の支払いには消費税がかからないため、給与をいくら支払っても「支払った消費税額」は0円です。そのため、赤字にもかかわらず「預かった消費税額」のほうが大きくなり、納税となることがあります。

2、簡易課税

簡易課税は、中小事業者の事務負担の軽減を図るために設けられたものです。「支払った消費税額」を把握する必要がなく、「預かった消費税額」のみから納税額が計算できる方法です。

計算式は次のとおりです。

(計算式)預かった消費税 - 預かった消費税 × 割合(みなし仕入率)= 納付額

この「割合」は業種ごとに税法で定められていて、次のようになっています。

第一種事業(卸売業)… 90%
第二種事業(小売業など)… 80%
第三種事業(製造業など)… 70%
第四種事業(その他の事業)… 60%
第五種事業(サービス業など)… 50%
第六種事業(不動産業)… 40%

簡易課税の計算方法の特徴として、本則課税のように消費税の「還付」となることはありません。
また、赤字の場合でも「預かった消費税額」があれば納付となります。

申告方法

(参考:消費税申告書)

(出典:国税庁ホームページ)

1、申告

納税義務者である個人事業主は1月1日~12月31日までの1年間の消費税額を計算し、翌年の3月末日(※3)までに税務署に申告します。

(※3)申告期限が土曜日、日曜日、国民の祝日・休日の場合は、その翌日が申告期限となります。

2、申告書の提出方法

① e-Taxで申告

 ⇒ 国税庁ホームページで作成した申告書等は、e-Taxで送信できます。

② 郵便又は信書便により申告書を税務署に送付

③ 住所地等の所轄税務署の受付に申告書を提出

 ⇒ 税務署の時間外収受箱への投函により、提出することも可能です。

納付方法

1、振替納税

指定した金融機関の口座から、納税額が自動的に引き落とされる制度です。

振替納税を利用する場合には、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(振替依頼書)」に必要事項を記載し、期日までに税務署に提出する必要があります。

2、e-Taxで納付する

自宅からインターネットを利用して納付できます。
e-taxには「ダイレクト納付」「インターネットバンキング」があります。

・ダイレクト納付 … e-Taxによる簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付する方法です。

・インターネットバンキング … インターネットバンキング等から納付する方法です。

3、クレジットカードで納付する

インターネットを利用して専用のWeb 画面から納付できます。

4、QRコードによりコンビニで納付する

ご自宅などで、確定申告書等作成コーナーやコンビニ納付用QRコード作成専用画面から納付に必要な情報をQRコードとして作成(印刷)し、コンビ二エンスストアで納付できます。納付できる金額は30万円以下となります。

5、金融機関又は税務署の窓口で現金で納付する

金融機関又は税務署の窓口で、納付書により現金で納付する方法です。
納付書をお持ちでない方は、税務署で入手できます。金融機関で用意してある場合もあります。

納期限は3月末日(※4)です。
ただし、振替納税を利用している場合は、これよりも後に口座から引き落としがあります。振替日については、国税庁のホームページより確認ができます。

(※4)納期限が土曜日、日曜日、国民の祝日・休日の場合は、その翌日が納期限となります。

必要経費になるか

消費税の納付が必要経費になるかどうかは、経理方法により異なります。

1、税抜経理方式の場合

納付した消費税は必要経費になりません。

2、税込経理方式の場合

納付した消費税は必要経費になります。

税抜経理方式と税込経理方式の違い

・税抜経理方式
 本体価格と消費税部分を区分して経理する方式になります。

・税込経理方式
 本体価格と消費税部分を区分せずに、合計額で経理する方式になります。

住民税

住民税は個人にも法人にもかかりますが、ここでは個人に係る住民税(個人住民税)について説明します。

住民税とは、市区町村が行う住民に対する行政サービスに必要な経費を、そこに住んでいる人々が負担するものです。住民税は、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と定額で課税される「均等割」からなっています。

住民税は1月1日現在に居住している市区町村に納付します。

計算方法

住民税は「所得割額」と「均等割額」を合計したものが納税額となります。

1、所得割額

暦年(1月~12月)で課税所得金額を計算し、これに税率を乗じて計算します。
「所得税」が超過累進税率を採用しているのに対し、「住民税」の税率は一律10%です。ちなみに住民税とは「都道府県民税(4%)」と「市町村民税(6%)」の2つの税金の総称です。

2、均等割額

均等割額とは、所得の金額に左右されずに定額で課税される部分です。
金額は5,000円となっており、内訳は次のとおりです。

・道府県民税(都民税)  1,500円
・市町村民税(特別区民税)3,500円

この均等割額は、収入が少ない場合などには免除になる場合があります。

申告方法

所得税の確定申告書を税務署に提出すると、その情報が各市区町村に送られるため、別途住民税の申告をする必要はありません。

所得税の確定申告書 第二表の下段部分に住民税に関する記載欄があるので、必要に応じて記載します。

納付方法

住民税の納付方法は「普通徴収」と「特別徴収」の2つの納付方法があります。

1、 普通徴収

毎年6月頃に納付書が市区町村から本人宛てに送られてきて、年4回に分けて支払います。一括で支払うことも可能です。個人事業主自身の住民税はこの普通徴収で納めます。

2、 特別徴収

給与から住民税を控除する方法です。個人事業主が従業員を雇った場合、原則として、従業員への給与の支払時に住民税を控除して、翌月10日までに納付します。毎月納付するのは事務手数がかかるため、従業員が10人未満であれば、半年ごとの納付にすることもできます。その場合は、「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出します。

このように個人事業主は、自分自身の住民税の支払いと、従業員がいる場合は給与から控除した住民税の支払いをする必要があります。

ただし、従業員の住民税については給与から控除した金額を、そのまま納付するだけですので、個人事業主に金銭の負担はありません。

必要経費になるか

住民税の納付は事業所得の金額の計算上、必要経費になりません。

個人事業税

個人が行っている事業が、法定業種に該当する場合に個人事業税がかかります。法定業種には物品販売業や飲食店業、不動産貸付業など70の業種が定められており、ほとんどの事業が該当することになります。

東京都主税局のホームページに「法定業種と税率」の一覧の記載があります。

(出典:東京都主税局ホームページ)

計算方法

個人事業税も、所得税と同じように所得に対して課税される税金です。そのため、所得が増えれば納税額も多くなります。

個人事業税で特徴的な点は、年間290万円(営業期間が1年未満の場合は月割)の「事業主控除」がある点です。そのため事業所得(※5)が年間290万円までならば個人事業税はかかりません。
税率は3%~5%となっており、業種によって定められています。例えば物品販売業や飲食店業、不動産貸付業は5%となっています。

(※5)個人事業税の計算は、青色申告特別控除額を控除できないなど、所得税の計算と異なる点があります。また、不動産所得がある場合には不動産所得も考慮します。

申告方法

所得税の確定申告書を提出すると、その情報が各都道府県に送られるため、別途個人事業税の申告をする必要はありません。

所得税の確定申告書 第二表の下段部分に事業税に関する記載欄があるので、必要に応じて記載します。

納付方法

各都道府県から8月頃に納付書が送られてきます。納付時期はおおむね8月と11月の年2回です。

必要経費になるか

個人事業税の納付は事業所得の金額の計算上、必要経費になります。

償却資産税

「機械・装置」や「工具・器具・備品」などの一定の事業用資産(償却資産といいます)を所有していていると償却資産税がかかります。

償却資産を所有している場合は、毎年1月1日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)について、1月31日までにその資産が所在する都税事務所や市町村に申告する必要があります。

計算方法

毎年1月1日時点で、「機械・装置」や「工具・器具・備品」などの償却資産を所有しており、その課税標準額が150万円以上のときに課税されます。税率は1.4%です。

(計算式)課税標準額 × 税率(100分の1.4)= 税額

① 課税標準額とは

各資産の「評価額」の合計額です。

② 評価額とは

資産の取得価額を基礎として、取得後の経過年数に応じた価値の減少(減価)を考慮して算出します。

申告方法

(参考:償却資産申告書)

(出典:東京都主税局ホームページ)

償却資産申告書に、所有している資産の名称、取得日、取得価額などを記載して、毎年1月末までに提出します。提出先は都税事務所や市町村になります。

納付方法

6月上旬位に納付書が送られてきて、年4回に分けて支払います。一括払いすることもできます。

必要経費になるか

償却資産税の納付は事業所得の金額の計算上、必要経費になります。

【当事務所へのご依頼・お問合わせ】

個人事業主が納める税金について解説しました。

事業を行っていくうえで、いつ、どのくらい税金を納付するのか把握しておくことは必須です。また、できるだけ税金の納付は少なく抑え、その分を設備投資に回したり、もしものときの蓄えにしたいものです。そのためにも無駄な税金を支払っていないかの検討を行いましょう。

例えば次のようなものです。

・経費にできるものを見落としていた
・未払金として経費計上できたものがあった
・資産計上しなくても、一括で経費計上できるものだった
・所得控除などの適用を失念していた
・消費税がかからない収入を課税として処理していた
・消費税の計算方法が簡易課税のほうが有利だった

他にも節税対策はないか、アドバイスをさせて頂くことが可能です。

当事務所は東京都板橋区に所在しております。
対応地域は東京23区を中心に、その他の地域もオンラインや郵送により柔軟に対応しております。
どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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東京都板橋区の税理士です。
法人の税務顧問、個人の確定申告、相続税・贈与税の申告やご相談を承っております。税務情報を随時更新しています。
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