法人成り⑦(個人事業の法人化)- 純損失の繰越控除と欠損金の繰越控除について

法人成り⑦(個人事業の法人化)- 純損失の繰越控除と欠損金の繰越控除について

この記事について

「法人成り ①」から「法人成り ⑨」までをまとめ、加筆したものを2020年12月10日に掲載しました。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年11月30日

事業が赤字になった場合、その赤字を翌年以後に繰越せる制度があります。

例えば、1年目が赤字で、2年目が黒字の場合を考えてみましょう。1年目が赤字であったのに、2年目にその黒字の全額に対して税金が課されるというのは納得がいかないと思います。そのため、1年目の赤字と2年目の黒字を相殺できる制度が個人・法人共に定められています

個人 … 純損失の繰越控除
法人 … 欠損金の繰越控除

赤字と黒字を相殺するという考え方は同じですが、それぞれ異なる点もあります。詳しく見ていきましょう。

純損失の繰越控除(個人)

純損失の繰越控除につき、国税庁のホームページを確認してみましょう。

 事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。

(出典:国税庁ホームページ)

ここでは次のことが書かれています。

・事業所得が赤字となった
・損益通算をしても引ききれない赤字の額がある(純損失の金額)
・その引ききれなかった赤字の額は翌年以後3年間にわたって繰り越せる

「損益通算」とは、赤字の所得を他の黒字の所得から控除することができる制度です。損益通算できる赤字の所得は以下の4つのうち一定のものになります。

① 不動産所得の赤字
② 事業所得の赤字
③ 山林所得の赤字
④ 譲渡所得の赤字

事業所得が赤字となった場合、まず、その年分の他の黒字の所得から控除します。控除しきれなかった赤字の額は翌年以後3年間にわたって繰り越すことになります。

また、純損失の繰越控除は青色申告の特典となっているため、この繰越控除の特例の適用を受けるには、青色申告をしていることが前提となります。

欠損金の繰越控除(法人)

次は、法人の欠損金の繰越控除の規定を見てみましょう。

青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前9年(注1)以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、その各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます。

平成28年度の税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。

(出典:国税庁ホームページ)

簡潔に説明すると、欠損金額(赤字)が生じた場合、その赤字は翌年以後10年間にわたって繰り越せることが書かれています。加えて、欠損金額については、青色申告書を提出した事業年度に限ることが説明されています。

個人と法人の繰越控除の相違点

個人の繰越控除と法人の繰越控除の大きな違いは、その繰り越せる期間の長さです。個人の場合は3年間ですが、法人の場合は10年間となっています

例えば多額の赤字となった場合、その赤字分を取り戻すのに3年間では足りない場合があります。個人の場合は、3年間のうちに取り戻せなければ、相殺しきれなかった赤字はそこで切捨となります。それに対して法人の場合は10年間あるため、赤字が切捨となる可能性は低いでしょう。

今日のポイントをまとめます。

① 赤字を翌年(翌年度)以後の黒字と相殺できる制度として次のものがある。
・個人の場合は純損失の繰越控除
・法人の場合は欠損金の繰越控除
② 「純損失の繰越控除」と「欠損金の繰越控除」の大きな違いは、その繰り越せる期間の長さにある。個人は3年間だが、法人は10年間となっている。

個人事業を法人成りした場合、赤字を繰り越せる期間が長いのは大きなメリットです。法人成りを検討する場合のメリットの一つとして検討しましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年11月30日)