法人成り⑥(個人事業の法人化)- 事業専従者控除について

法人成り⑥(個人事業の法人化)- 事業専従者控除について

この記事について

「法人成り ①」から「法人成り ⑨」までをまとめ、加筆したものを2020年12月10日に掲載しました。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年11月28日

前回は、個人事業のときに適用できるものとして「青色事業専従者給与」を説明しました。これは、青色申告者である個人事業主が生計を一にしている配偶者や親族(以下「配偶者等」といいます)に給与を支払うときの取り扱いとなります。

今回は青色申告をしていない場合、つまり白色申告者の場合に配偶者等がその事業に従事している場合の取り扱いを見ていきます

事業専従者控除の概要

事業専従者控除の概要を国税庁のホームページで見てみましょう。

1 青色事業専従者控除と事業専従者控除の概要

生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払うことがあります。これらの給与は原則として必要経費にはなりませんが、次のような特別の取扱いが認められています。

(1) 青色申告者の場合
一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例

(2) 白色申告者の場合
事業に専ら従事する家族従業員の数、配偶者かその他の親族かの別、所得金額に応じて計算される金額を必要経費とみなす事業専従者控除の特例

(注) 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人又は白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

(出典:国税庁ホームページ)

最初の部分は、「青色事業専従者控除」と同様です。個人事業主が配偶者等に給与を支払った場合には、その給与は原則として必要経費にできません。

次に例外が説明されていて、白色申告者の場合は、事業に専ら従事する家族従業員の数などに応じて計算される金額を必要経費とみなす「事業専従者控除の特例」が定められています。

最後に、白色申告者の事業専従者である者は「控除対象配偶者」や「扶養親族」になれないことが説明されています。

事業専従者控除の額

事業専従者控除の額はいくらなのか、見てみましょう。

3 事業専従者控除

 事業専従者控除額は、次のイ又はロの金額のどちらか低い金額です。

イ 事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円

ロ この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

(出典:国税庁ホームページ)

事業専従者控除額は、イ又はロのいずれか低い金額になるようです。

イでは、専従者の種類ごとに控除できる金額を定めています。

・事業主の配偶者の場合 …   86万円
・事業主の配偶者以外の親族 … 50万円

ロでは、事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額としています。

つまり、控除できる最高額は86万円又は50万円で、事業所得等の金額が少ないときは、これより控除額が少なくなります。

白色事業専従者控除を受けるための要件

白色事業専従者控除を受けるための要件を確認します。

(1) 白色申告者の営む事業に事業専従者がいること。

事業専従者とは、次の要件の全てに該当する人をいいます。

イ 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

(2) 確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること。

(出典:国税庁ホームページ)

まず(1)で、事業専従者がいることが前提となっており、事業専従者とはどうのような者かの要件が説明されています。

(事業専従者に該当するための要件)

① 白色申告者と生計を一にする配偶者や親族であること
② 12月31日現在で15歳以上であること
③ 1年間のうち6月を超える期間、その事業に専ら従事していること

ここでのポイントは③となり、前回の「青色事業専従者給与」でも説明したとおり、事業に専ら従事していないといけません。そのため、配偶者がその事業以外に、会社員としてフルタイムで働いている場合などには、その配偶者は③の要件を満たすのが難しくなります。

次に(2)で、この控除を受けるには、確定申告書にその旨や金額などを記載することが要件となっています。

白色申告者の事業専従者控除は、青色申告の青色事業専従者給与と異なり、税務署への事前の届出や申請は必要なく、確定申告書に必要事項を記載すれば足ります。

今日のポイントをまとめます。

① 白色申告者の場合で、その事業に専ら従事する生計を一にする配偶者や親族がいるときは、一定額を控除することができる。
② この控除を受けるための税務署への事前の届出や申請は不要で、確定申告書に必要事項を記載すればよい。

個人事業を営んでいる場合は、通常は青色申告をしていることが多く、白色申告の事業専従者控除を使うことはあまりないと思います。

ただし、現在、個人事業を営んでいて白色申告の事業専従者給与の規定を適用していない場合には、法人成りするまでの間この適用を受けられないか検討しましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年11月28日)