個人事業を開業したときの税務署への届出書・申請書

個人事業を開業したときの税務署への届出書・申請書

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年11月15日
個人事業を開業したときの税務署への届出書・申請書の提出について税理士が解説します
 
個人事業を始める予定です。
個人事業を始めた場合、税務署への届出書・申請書の提出が必要と聞きました。
どのような届出書・申請書を提出すればよいか教えてください。
個人事業を始めた場合に税務署へ提出するものとして開業届出書があります。
また、提出は任意でも提出することで税金を少なく抑えることが可能な届出書・申請書があります。
届出書・申請書によっては提出期限が定められているので、
事業の状況に応じて必要な書類を期限内に提出するようにしましょう。

個人事業を開業した場合は、税務署への各種届出書・申請書の提出が必要になります。これらの届出書・申請書には、提出が義務付けられているものや、提出は任意ですが提出したほうが納税額が少なく済むものがあります。

個人事業を開業したときに、税務署への提出が考えられる届出書・申請書は次のとおりです。
多数ありますが、提出しなくても差し支えないものもあります。

① 個人事業の開業・廃業等届出書
② 所得税の青色申告承認申請書
③ 青色事業専従者給与に関する届出書
④ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
⑤ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
⑥ 所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
⑦ 所得税の棚卸資産の評価方法の届出書
⑧ 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
⑨ 消費税課税事業者選択届出書
⑩ 消費税課税期間特例選択届出書
⑪ 消費税簡易課税制度選択届出書

まずは開業した際に、どの届出書・申請書を提出すればよいか概要を説明します

多くの人に提出が必要と思われるものとして次の2つがあります。
① 個人事業の開業・廃業等届出書
② 所得税の青色申告承認申請書

生計を一にする配偶者や親族に給与を支払う場合には、次の届出書が必要になります。
③ 青色事業専従者給与に関する届出書

従業員に給与を支払う場合に提出します。
従業員には生計を一にする配偶者や親族も含まれます。
④ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
⑤ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
(⑤については提出は任意ですが、事務手数の軽減ができるため提出をお勧めします)

納税地の変更や棚卸資産の評価方法の変更、減価償却資産の償却方法の変更をする場合に提出します。
⑥ 所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書
⑦ 所得税の棚卸資産の評価方法の届出書
⑧ 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書

次のものについては、原則として、提出の必要がない場合が多いと思われます。
ただし、納税額に大きく影響を与える可能性がありますので、事業の状況に応じて提出が必要かどうかの検討は必ず行いましょう。
⑨ 消費税課税事業者選択届出書
⑩ 消費税課税期間特例選択届出書
⑪ 消費税簡易課税制度選択届出書

それでは内容を個別に見ていきます

個人事業の開業・廃業等届出書

内容

個人事業を開業した場合は「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です。これは開業したことを税務署へ通知するためのものになります。

この届出書の名称に「廃業等」という文言が入っているのは「事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したとき」もこの届出書を提出するためです。

手続対象者

新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方が対象になります。

提出時期

個人事業を開業した日から1月以内に提出します。
なお、提出期限が土・日・祝日等の場合は、その翌日が提出期限となります。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

添付書類

開業届にはマイナンバーを記載します。そのため、開業届を書面により提出する場合は、申請をする方の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります。

本人確認書類とは、次のとおりです。

イ マイナンバーカードを持っている場合 … マイナンバーカード
ロ マイナンバーカードを持っていない場合 … 次の(1)のいずれかひとつに加え、 (2)のいずれかひとつ
  (1) 通知カード、住民票の写し(マイナンバーの記載があるものに限ります)など
  (2) 運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポートなど

提出後にこの届出書の控えが必要になる場合

次のような場合に開業届の控えが必要になることがあります。

 ・銀行借入れ
 ・屋号付きの銀行口座の開設
 ・子供が保育園に通っている場合に市区町村に提出する場合(サラリーマンを辞めて個人事業を始めた場合など)

そのため、個人事業の開業・廃業等届出書は、提出用以外にも「控用」を作成し手元に保管するようにしましょう。個人事業の開業・廃業等届出書以外も、税務署に提出する届出書・申請書については「控用」を保管しておくことをおすすめします。

【記載例】

「個人事業の開業・廃業等届出書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 税務署名、提出日

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

・提出年月日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

② 納税地

・住所地、居所地、事業所等のいずれかを選択し、その住所と電話番号を記載します。電話番号は固定電話、携帯電話のどちらでも構いません。

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

③ 上記以外の住所地・事業所等

住所地、事業所等の両方が存在する場合に記載します。

イ 「納税地」の欄に住所地の住所を記入した場合 … この欄に事業所等の住所を記載します。

ロ 「納税地」の欄に事業所等の住所を記入した場合 … この欄に住所地の住所を記載します。

④ 氏名、生年月日

イ 氏名 … 氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

ロ 生年月日 … 生年月日を記載します 。

⑤ 個人番号

マイナンバーを記載します。

⑥ 職業、屋号

イ 職業 … 職業を記入します。事業の種類により個人事業税の税率が変わります。税率は次のとおりです。

(出典:東京都主税局ホームページ)

これらの事業に該当しなければ個人事業税はかかりません。

ロ 屋号 … 屋号を記載します。屋号がなければ記載は不要です。

⑦ 届出の区分

開業の場合は、開業を選択します。「住所」「氏名」欄がありますが、この欄は事業の引継ぎを受けた場合にのみ記載します。

⑧ 所得の書類

個人事業の開業場合は、「事業(農業)所得」を選択します。

⑨ 開業・廃業等日

個人事業の開業の場合は、開業日を記載します。

⑩ 事業所等を新増設、移転、廃止した場合

個人事業の開業の場合は、記載は不要です。

⑪ 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合

個人事業の開業の場合は、記載は不要です。

⑫ 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無

イ 「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」

個人事業の場合で「青色申告承認申請書」を提出する場合には「有」を選択します。青色申告には各種特典があるため、通常は提出することをお勧めします。

ロ 消費税に関する「課税事業者選択届出書」又は「事業廃止届出書」

個人事業の開業の場合は、原則として、1年目及び2年目は消費税の申告・納付の必要がない「免税事業者」に該当します。免税事業者であれば消費税を納付しなくて良いため、通常は「課税事業者選択届出書」は提出しません。

いっぽう、1年目に多額の設備投資をする場合など消費税の還付を受けたい場合があります。その場合には免税事業者では還付が受けられないため「課税事業者選択届出書」を提出し「課税事業者」を選択する場合があります。

ただし、「課税事業者選択届出書」を提出するべきかどうかの判断(提出したほうが納税額が少なくなるかどうかの判断)は大変難しいため、専門家にご相談されることをお勧めします。

⑬ 事業の概要

事業の内容を具体的に記載します。

⑭ 給与等の支払の状況

届出日現在における「給与の支給人員」と「給与等の支払の状況」を記載します。それらの給与につき、源泉徴収をすべき税額の有無を選択します。

イ 給与の定め方 … 日給・月給等の区分を記載します。

ロ 税額の有無 … 各人ごとの「給与額」及び「扶養親族等の状況」等からみて源泉徴収すべき税額があるかどうかを判断します。その区分の全員について源泉徴収すべき税額が有る場合には「有」を、無い場合には「無」を選択します。

⑮ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無、給与支払を開始する年月日

イ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する場合には「有」を選択し、提出しない場合には「無」を選択します。

(源泉所得税の納期の特例について)

従業員などに給与を支払う際に、給与から控除した源泉所得税は、原則として、控除した月の翌月10日までに納付する必要があります。ただし、この申請書を提出すると、年に2回(7月10日、1月20日)まとめて納付することが認められます。

・給与だけでなく、退職手当、税理士等の報酬・料金から控除した源泉所得税についても年に2回まとめて納付することができます。
・給与の支給人員が常時10人未満であることが要件となっています。
・提出した月の翌月の給与から控除する源泉所得税から適用されます。そのため、最初に支給する給与から適用を受けたい場合は、最初に支給する給与の前月中に開業届と合わせて提出しましょう。

(年2回の納付日および対象月)

・1月~ 6月に控除した源泉所得税 → 7月10日までに納付
・7月~12月に控除した源泉所得税 → 翌年1月20日までに納付

ロ 給与支払を開始する年月日

この欄には、給与等の支払を開始する日を記載します。もし、届出日現在において既に給与等の支払をした場合にはその開始をした日を記載します。

⑯ 関与税理士

税理士が署名する欄になります。
そのため、自分で提出する場合は記載不要です。

所得税の青色申告承認申請書

内容

青色申告の承認を受ける場合に提出します。青色申告の承認を受けると税務上の各種特典があるため、通常は、提出することをおすすめします。

青色申告の特典をいくつか挙げます。

・青色申告特別控除
・青色事業専従者控除
・少額減価償却資産(30万円未満)の特例
・純損失の繰越控除

手続対象者

事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う方のうち、青色申告の承認を受けようとする方が対象です。

提出時期

青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに提出します。

ただし、その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日から2月以内となります。

したがって、提出期限は次のようになります。

① 1月15日までに開業した場合 … 開業した年の3月15日
② 1月16日以後に開業した場合 … 開業日から2ヶ月以内

なお、提出期限が土・日・祝日等の場合は、その翌日が提出期限となります。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

青色申告の各種特典

青色申告の各種特典について、いくつか説明します。

青色申告の特典 その1 「青色申告特別控除」

下記のいずれかの所得控除が受けられます。

 ・10万円の所得控除
 ・一定の要件(※)を満たした場合は、55万円の所得控除
 ・一定の要件を満たし、かつ、e-Taxよる電子申告又は電子帳簿保存を行っている場合には、65万円の所得控除

(※)一定の要件とは
   複式簿記による記帳
   貸借対照表および損益計算書の確定申告書への添付、など

青色申告の特典 その2 「青色事業専従者控除」

これについては、この後の「 青色事業専従者控除に関する届出書」で説明します。

青色申告の特典 その3 「少額減価償却資産の特例」

10万円以上の資産(パソコン、プリンター、エアコンなどの器具備品、機械など)を購入した場合は、原則として、購入した年に全額を経費計上することはできません。資産計上をしたうえで減価償却(※)を行うことになります。

ただし、青色申告承認申請書を提出している場合には、30万円未満の資産については、購入した年に全額を経費計上することができます。この特例を受けるためには、青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に一定の事項を記載して確定申告書に添付するなどの要件や、1年あたりの限度額などがあります。

※ 減価償却とは
例えば、1月に20万円のパソコンを買った場合には、4年に渡って毎年5万円ずつ経費に計上していきます。このようにその資産の耐用年数(国が定めたその資産を使用できる年数)によって、毎年、経費計上することを減価償却といいます。

青色申告の特典 その4 「純損失の繰越控除」

個人事業を始めた場合、初年度は開業にお金がかかることもあり、赤字になることも多いです。その場合、青色申告承認申請書を提出していると、その赤字の金額のうち他の所得と損益通算しても控除しきれない部分の金額は、翌年分の黒字から控除できます。結果、翌年分の納税額を減少させることができます。

さらにこの赤字は、赤字が発生した年の翌年以後3年間に渡って繰り越すことができます。分かりやすく説明します。例えば、所得が事業所得のみの場合で、開業1年目に100万円の赤字が生じたと仮定しましょう。

翌年が30万円の黒字の場合、初年度に生じた赤字100万円のうち、70万円(赤字 100万円-黒字30万円)が控除しきれないことになります。そのため、この70万円は翌々年に繰越せます。

翌々年でも黒字から控除しきれないときは、翌々々年まで繰り越すことができます。

【記載例】

「所得税の青色申告承認申請書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 税務署名、提出日

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

・提出年月日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

② 納税地

・住所地、居所地、事業所等のいずれかを選択し、その住所と電話番号を記載します。電話番号は固定電話、携帯電話のどちらでも構いません。

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

③ 上記以外の住所地・事業所等

住所地、事業所等の両方が存在する場合に記載します。

イ 「納税地」の欄に住所地の住所を記入した場合 … この欄に事業所等の住所を記載します。

ロ 「納税地」の欄に事業所等の住所を記入した場合 … この欄に住所地の住所を記載します。

④ 氏名、生年月日

イ 氏名 … 氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

ロ 生年月日 … 生年月日を記載します 。

⑤ 職業、屋号

イ 職業 … 職業を記入します。事業の種類により個人事業税の税率が変わります。税率は次のとおりです。

(出典:東京都主税局ホームページ)

これらの事業に該当しなければ個人事業税はかかりません。

ロ 屋号 … 屋号を記載します。屋号がなければ記載は不要です。

⑥ 令和  年分以後の所得税の申告は、青色申告書によりたいので申請します。

青色申告を開始したい年分を記載します。

⑦ 事業所又は所得の起因となる資産の名称及びその所在地

事業所の「名称」と「所在地」を記載します。名称の例としては「本店」「○○支店」などです。

⑧ 所得の種類

個人事業の場合は「事業所得」を選択します。

⑨ いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無

今までに青色申告承認の「取消し」を受けたり「取りやめ」の届出をしたことのある場合は、⑴の「有」を選択したうえで、「取消し」「取りやめ」のいずれかを選択します。かつ、「取消しの通知のあった日」又は「取りやめの届出をした日」の年月日を記載します。


⑴に該当しない場合は、⑵の「無」を選択します。


なお「取消しの通知のあった日」又は「取りやめの届出をした日」から1年以内は、申請が却下されることがあります。

⑩ 本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日

最初に青色申告をしようとする年の1月16日以後に開業した場合にその年月日を記載します。

⑪ 相続による事業承継の有無

相続により事業の承継があった場合は、⑴の「有」を選択し、相続を開始した日の年月日及び被相続人の氏名を記載します。

⑴に該当しない場合は、⑵の「無」を選択します。

⑫ その他参考事項

(1) 簿記方式
「複式簿記」「簡易簿記」「その他」のいずれかを選択します。
65万円(又は55万円)の青色申告特別控除を受ける場合には、「複式簿記」による記帳が必要になります。

(2) 備付帳簿名

備え付ける帳簿を選択します。65万円(又は55万円)の青色申告特別控除を受ける場合には、つぎの帳簿を備え付ける必要があります。

・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳
・預金出納帳
・総勘定元帳
・仕訳帳

⑬ 関与税理士

税理士が署名する欄になります。
そのため、自分で提出する場合は記載不要です。

青色事業専従者給与に関する届出書

内容

例えば配偶者に事業を手伝ってもらうことがあります。その場合に配偶者に給与を支払うことも多いと思いますが、原則としてその給与は必要経費に計上することができません。結果、納税額がその分増えてしまう(その分の納税額が減らない)ことになります。

このように現在の税法では、生計を一にする配偶者やその他の一定の親族に給与を支払っても、原則として、必要経費に計上できないことになっています。

ただし、「所得税の青色申告承認申請書」を提出したうえで、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出し、かつ、一定の要件を満たすと、その給与を必要経費に計上することができます。

留意点として、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は「控除対象配偶者」や「扶養親族」になることができません。

手続対象者

青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする青色申告者が対象です。

提出時期

青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日までに提出します。

ただし、その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2月以内となります。

したがって、提出期限は次のようになります。

① 1月15日までに開業した場合 … 開業した年の3月15日
② 1月16日以後に開業した場合 … 開業日から2ヶ月以内
③ 新たに専従者がいることとなった場合 … 専従者がいることとなった日から2ヶ月以内

なお、提出期限が土・日・祝日等の場合は、その翌日が提出期限となります。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

添付書類

届出書に記載した内容とは別に給与規程を定めているときは、その写しを1部提出します。

青色事業専従者の要件と支給額の限度について

(1) 必要経費となる青色事業専従者給与額は「支給した給与の金額が次の状況等からみて相当と認められるもの」であり、かつ「この届出書に記載した金額の範囲内のもの」に限られます。

イ 専従者の労務に従事した期間、労務の性質及びその程度
ロ あなたの事業に専従するほかの使用人の給与及び同種同規模の事業に専従する者の給与の状況
ハ 事業の種類・規模及び収益の状況

(2) 青色事業専従者の要件は次のとおりです
イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
ロ その年12月31日現在(専従者又は青色申告者が年の中途で死亡した場合には、それぞれ死亡当時)で年齢が15歳以上であることなど

【記載例】

「青色事業専従者給与に関する届出書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 税務署名、提出日

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

・提出年月日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

② 届出書 又は 変更届出書

開業の場合は、「届出」を選択します。

「変更届出書」を選択する場合は次のとおりです。

この届出書に記載した専従者給与の金額の基準を変更する場合(給与規程を変更する場合、通常の昇給のわくを超えて給与を増額する場合など)や新たに専従者が加わった場合には、遅滞なく変更届出書を提出します。

③ 納税地

・住所地、居所地、事業所等のいずれかを選択し、その住所と電話番号を記載します。電話番号は固定電話、携帯電話のどちらでも大丈夫です。

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

④ 上記以外の住所地・事業所等

住所地、事業所等の両方が存在する場合に記載します。

イ 「納税地」の欄に住所地の住所を記入した場合 … この欄に事業所等の住所を記載します。

ロ 「納税地」の欄に事業所等の住所を記入した場合 … この欄に住所地の住所を記載します。

⑤ 氏名、生年月日

イ 氏名 … 氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

ロ 生年月日 … 生年月日を記載します 。

⑥ 職業、屋号

イ 職業 … 職業を記入します。事業の種類により個人事業税の税率が変わります。税率は次のとおりです。

(出典:東京都主税局ホームページ)

これらの事業に該当しなければ個人事業税はかかりません。

ロ 屋号 … 屋号を記載します。屋号がなければ記載は不要です。

⑦   年  月以後の青色事業専従者給与の支給に関しては次のとおり(定めた 又は 変更することとした)ので届けます。

専従者に給与を支払い始める年と月を記入します。
また、新たに定めた場合には「定めた」を選択します。

⑧ 青色事業専従者給与

この欄の記載例は次のとおりです。

(出典:国税庁ホームページ)

給与規程の「写し」を添付したときは、この「昇給の基準」欄の記載を省略することができます。

⑨ その他参考事項、変更理由

イ その他参考事項

専従者が他に職業を有している場合や就学している場合に記載します。

ロ 変更理由

この届出書が変更届出書に該当する場合に、その理由を記載します。

⑩ 使用人の給与

使用人(従業員)のうち、専従者の仕事と類似する仕事に従事する人や、給与の水準を示す代表的な例を選んで記載します。専従者以外に使用人がいない場合には記載は不要です。

⑪ 関与税理士

税理士が署名する欄になります。
そのため、自分で提出する場合は記載不要です。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

内容

開業後、初めて従業員(青色事業専従者を含む)を雇うことになった際に提出するものです。

開業当初から従業員がいる場合には、「開業届」にその旨を記載すれば、「給与支払事務所等の開設等届出書」の提出は不要となっています。
開業当初は従業員がいなかった場合で、その後、従業員を雇用した場合には「給与支払事務所等の開設等届出書」の提出が必要となります。

手続対象者

国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設、移転又は廃止した給与等の支払者が対象となります。

提出時期

個人事業を開始した日から1か月以内に提出します。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

添付書類

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」にはマイナンバーを記載します。そのため、この届出書を書面により提出する場合は、申請をする方の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります。

本人確認書類とは、次のとおりです。

イ マイナンバーカードを持っている場合 … マイナンバーカード
ロ マイナンバーカードを持っていない場合 … 次の(1)のいずれかひとつに加え、(2)のいずれかひとつ
  (1) 通知カード、住民票の写し(マイナンバーの記載があるものに限ります)など
  (2) 運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポートなど

【記載例】

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 提出日、税務署名

・令和 年 月 日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

② 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

「開設」を選択します。

③ 住所又は本店所在地

納税地の住所、電話番号を記載します。電話番号は携帯電話でも構いません。

(納税地について)

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

④ 氏名又は名称

屋号がある場合は屋号を記載します。ない場合は個人事業主の氏名を記載します。

⑤ 個人番号又は法人番号

マイナンバーを記載します。

⑥ 代表者氏名

個人事業主の氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

⑦ 開設・移転・廃止年月日、給与支払を開始する年月日

イ 開設・移転・廃止年月日

「開設」を選択します。また、開業の場合は、原則として開業日を記載します。

ロ 給与支払を開始する年月日

給与支払事務所を開設した月中に給与の支払が開始されない場合は、給与の支払を開始した日(又は開始予定日)を記載します。

⑧ 届出の内容及び理由

「開業又は法人の設立」を選択します。

⑨ 給与支払事務所等について

個人事業の開業の場合は、ここは空欄で構いません。

⑩ 従業員数

給与等を支払う職種別の人員数を記載します。「役員」の欄は、個人事業主の場合は記載不要です。

⑪ その他参考事項

開業の場合、原則として記載不要です。

⑫ 税理士署名押印

税理士が署名・押印する欄になります。そのため、自分で提出する場合は記載不要です。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

内容

従業員に給与を支払う場合には、その給与から源泉所得税を控除し、控除した月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。ただし、従業員が常時10人未満である場合など事業規模が比較的小さい場合には、毎月納付するのは事務負担が大きいと考えられます。そのため半年分をまとめて、年に2回(1月20日、7月10日)納付できる特例が定められています。

この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。この特例を受けたほうが事務負担が軽減されるため、通常は提出することをおすすめしています。

(適用時期について)
「この申請書を提出した月に支給される給与から控除された源泉所得税」については、原則どおり翌月10日が納期限となります。「申請書を提出した次の月に支給される給与から控除される源泉所得税」から、この特例が適用されるので注意しましょう。

手続対象者

給与の支給人員が常時10人未満である個人事業主で、納期の特例制度の適用を受けようとする者が対象です。

提出時期

特に定められていませんが、原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

支給人員が常時10人未満でなくなった場合

給与の支給人員が常時10人未満でなくなった場合には、納期の特例の要件に該当しなくなり、この特例の適用を受けることができなくなります。その場合には、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出する必要があります。

【記載例】

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 提出日、税務署名

・令和 年 月 日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

② 住所又は本店の所在地

納税地の住所、電話番号を記載します。電話番号は携帯電話でも構いません。

(納税地について)

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

③ 氏名又は名称

屋号がある場合は屋号を記載します。ない場合は個人事業主の氏名を記載します。

④ 法人番号

申請者が法人の場合に法人番号を記載るる欄になります。
そのため個人の場合には記載不要です。

⑤ 代表者氏名

個人事業主の氏名を記入し、押印をします。
押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

⑥ 給与支払事務所等の所在地

「② 住所又は本店の所在地」と給与支払事務所の所在地が異なる場合に記載します。同じ場合には記載不要です。

⑦ 申請の日前6か月間の各月末の給与の支払を受ける者の人員及び各月の支給金額

この申請の日前6か月間の「各月末の人員」と「各月の給与の支給額」を記載します。「外」とあるのは、臨時に雇い入れた人がいるときは、ここに「各月末の人員」と「各月の給与の支給額」を記載します。

給与の支払いがまだない場合には記載不要です。

⑧ 1、現に国税の滞納があり又は…、2、申請の日前1年以内に納期の特例の承認を取り消されたことがある場合には…

国税の滞納や納付遅延、納期の特例の承認を取り消されたことがある場合に記載します。

所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書

内容

この届出書は次の場合に提出します。

イ 住所を有する場合に、その住所地に代えて居所地を納税地とする場合
ロ 住所又は居所を有する場合に、その住所地又は居所地に代えて事業所等の所在地を納税地とする場合
ハ 居所地又は事業所等の所在地を納税地としていた場合に、その納税地に代えて住所地を納税地とする場合

納税地は、原則として、事業主の自宅の住所になります。ただし、店舗や事務所を納税地とすることもでき、その場合にこの届出書を税務署に提出します。

(納税地を事業所にした場合)

例えば確定申告をする際、確定申告書の提出先は納税地の所轄税務署となります。したがって、自宅が板橋区にあり、自宅が納税地となっている場合は、板橋税務署に確定申告書を提出します。いっぽう、店舗が北区にあり納税地を店舗に変更した場合は、王子税務署に確定申告書を提出します。

また、税務署からの書類は納税地に送付されます。従って、店舗や事務所を納税地とすれば、そこに税務署からの書類が送られてきます。

プライベートと事業を分けたい場合は、納税地の変更を検討してもいいでしょう。

手続対象者

納税地を変更する人が対象となります。

提出時期

特に定められていません。
この届出書の提出があった日以後に納税地が変更されます。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。
届出書は「変更前」の税務署に提出します。

添付書類

「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」にはマイナンバーを記載します。そのため、この届出書を書面により提出する場合は、申請をする方の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要となります。

本人確認書類とは、次のとおりです。

イ マイナンバーカードを持っている場合 … マイナンバーカード
ロ マイナンバーカードを持っていない場合 … 次の(1)のいずれかひとつ に加え、(2)のいずれかひとつ
  (1) 通知カード、住民票の写し(マイナンバーの記載があるものに限ります)など
  (2) 運転免許証、公的医療保険の被保険者証、パスポートなど

留意事項

イ 転居等により納税地に異動があった場合

所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書ではなく、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出します。

ロ 振替納税を利用している場合

納税地の変更により管轄の税務署が変更となった場合は、新たに振替納税の手続が必要となります。「預貯金口座振替依頼書 兼 納付書送付依頼書」を、変更後の納税地を所轄する税務署長へ提出します。

【記載例】

「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 税務署名、提出日

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

・提出年月日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

② 所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書

「所得税」のみについて納税地の変更をする場合は、「消費税」の文言を二重線で抹消します。

③ 納税地

変更する前の住所地等を記載します。
納税地を「住所地」から「事業所等の所在地」に変更する場合は、ここでは「住所地」を選択し住所を記載します。電話番号は固定電話、携帯電話のどちらでも構いません。

(参考:納税地について)

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

④ 上記以外の住所地・事業所等

この欄に事業所等の住所を記載します。

⑤ 氏名、生年月日

イ 氏名 … 氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

ロ 生年月日 … 生年月日を記載します 。

⑥ 個人番号

マイナンバーを記載します。

⑦ 職業、屋号

イ 職業 … 職業を記入します。事業の種類により個人事業税の税率が変わります。税率は次のとおりです。

(出典:東京都主税局ホームページ)

これらの事業に該当しなければ個人事業税はかかりません。

ロ 屋号 … 屋号を記載します。屋号がなければ記載は不要です。

⑧ 納税地

(1) 変更前の納税地、住所・居所・事業所等の区分

住所地から事業所の所在地に納税地を変更する場合

イ 変更前の納税地 … 住所地を記載します
ロ 住所・居所・事業所等の区分 … 「住所」と記載します

(2) 変更後の納税地、住所・居所・事業所等の区分

イ 変更後の納税地 … 事業所の所在地を記載します
ロ 住所・居所・事業所等の区分 … 「事業所」と記載します

⑨ 居所又は事業所等の所在地を納税地とする(ことを便宜とする、必要がなくなった)事情

住所地から事業所の所在地に納税地を変更する場合には、「ことを便宜とする」を選択します。

事情の記載の一例としては「事業所で仕事をしているので滞在している時間が長いため」などです。

⑩ 事業所等の所在地及び事業内容

事業所等の屋号等、所在地及び事業内容を記載します。

⑪ その他参考事項

基本的に記載不要です。

⑫ 関与税理士

税理士が署名する欄になります。
そのため、自分で提出する場合は記載不要です。

所得税の棚卸資産の評価方法の届出書

内容

棚卸資産の評価方法の届出をする場合の届出書になります。

(棚卸資産の評価方法とは)

商品を販売する事業の場合を考えてみましょう。
この場合、商品の仕入れをしただけでは必要経費に計上できず、商品が売れたことによって初めて必要経費に計上できます。言い換えれば、期末に在庫として残っている商品については、必要経費にできません。この期末に残っている在庫の金額の算定方法を定めるのが、この届出書になります。

この算定方法はいくつか認められているのですが、届出書を提出しなければ「最終仕入原価法」になります。これは、期末(12月31日)に最も近い時点で取得した商品の1単位あたりの取得価額で計算する方法です。

個別法による原価法や先入先出法による原価法など他の評価方法を選択する場合には届出書を提出します。

手続対象者

事業所得者のうち、新たに事業を開始した方、従来の事業のほかに他の種類の事業を開始した方又は事業の種類を変更した方が対象です。

提出時期

上記「手続対象者」となった日の属する年分の確定申告期限までに提出します。
個人事業を始めた場合には、始めた年の翌年3月15日が期限となります。

なお、提出期限が土・日・祝日等の場合は、その翌日が提出期限となります。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

【記載例】

「所得税の棚卸資産の評価方法の届出書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 税務署名、提出日

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

・提出年月日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

② 所得税の(棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法)の届出書

棚卸資産の評価方法の届出をする場合には、「棚卸資産の評価方法」を選択します。

③ 納税地

・住所地、居所地、事業所等のいずれかを選択し、その住所と電話番号を記載します。電話番号は固定電話、携帯電話のどちらでも構いません。

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

④ 上記以外の住所地・事業所等

住所地、事業所等の両方が存在する場合に記載します。

イ 「納税地」の欄に住所地の住所を記入した場合 … この欄に事業所等の住所を記載します。

ロ 「納税地」の欄に事業所等の住所を記入した場合 … この欄に住所地の住所を記載します。

⑤ 氏名、生年月日

イ 氏名 … 氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

ロ 生年月日 … 生年月日を記載します 。

⑥ 職業、屋号

イ 職業 … 職業を記入します。事業の種類により個人事業税の税率が変わります。税率は次のとおりです。

(出典:東京都主税局ホームページ)

これらの事業に該当しなければ個人事業税はかかりません。

ロ 屋号 … 屋号を記載します。屋号がなければ記載は不要です。

⑦ (棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法)については、次によることとしたので届けます。

棚卸資産の評価方法の届出をする場合には、「棚卸資産の評価方法」を選択します。

⑧ 棚卸資産の評価方法

イ 事業の種類欄 … その評価の方法を採用する事業の種類を記載します。例えば、小売業、製造業又は漁業などと記載します。

ロ 棚卸資産の区分欄 … その評価の方法を採用する棚卸資産の区分を、上記イの事業の種類ごとに記載します。例えば、商品、製品、半製品、原材料、消耗品などと記載します。

ハ 評価方法欄 … 評価方法を記載します。例えば、個別法による原価法、先入先出法による原価法などと記載します。

⑨ 減価償却資産の償却方法

棚卸資産の評価方法の届出の場合は、記載不要です。

⑩ その他の参考事項

棚卸資産の評価方法の届出の場合は、(1)の記載は不要です。
(2)には、届出をすることとなった事情等を記載します。

⑪ 関与税理士

税理士が署名する欄になります。
そのため、自分で提出する場合は記載不要です。

所得税の減価償却資産の償却方法の届出書

内容

10万円以上の資産(パソコン、プリンター、エアコンなどの器具備品、機械など)を購入した場合は、原則として、購入した年に全額を経費計上することはできずに、減価償却(※)を行うことになります。

※ 減価償却とは
例えば、1月に20万円のパソコンを買った場合には、4年に渡って毎年5万円ずつ経費に計上していきます。このようにその資産の耐用年数(国が定めたその資産を使用できる年数)によって、毎年、経費計上することを減価償却といいます。
例外として、青色申告者には30万円未満の資産については購入した年に全額を経費計上することができる「少額減価償却資産の特例」があります。

償却方法にはいくつかあり、「減価償却資産の償却方法の届出書」はどの償却方法を選択するのかを届出るものになります。償却方法には定額法、定率法、生産高比例法などがあります。

届出書を提出しなければ「定額法」になります。これは、毎年の償却額(経費計上額)が均等となる方法です。

手続対象者

事業所得者、不動産所得者、山林所得者又は雑所得者のうち、次の方が対象です。

イ 新たに業務を開始した方
ロ 既に取得している減価償却資産と異なる種類の減価償却資産を取得した方
ハ 従来の償却方法と異なる償却方法を選定する事業所を新たに設けた方

提出時期

上記「手続対象者」となった日の属する年分の確定申告期限までに提出します。
個人事業を始めた場合には、始めた年の翌年3月15日が期限となります。

なお、提出期限が土・日・祝日等の場合は、その翌日が提出期限となります。

提出方法

届出書を作成のうえ、持参又は送付により提出します。

【記載例】

「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」の記載の仕方を各項目ごとに解説します。

① 税務署名、提出日

・税務署名 … 納税地の税務署名を記載します。納税地の税務署がどこなのかは、次の国税庁のサイトから調べることができます。

国税庁・税務署を調べる

このサイトに、納税地の郵便番号や住所を入力することにより所轄の税務署が分かります。

・提出年月日 … この届出書を提出する日付けを記載します。

② 所得税の(棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法)の届出書

減価償却資産の評価方法の届出をする場合には、「減価償却資産の償却方法」を選択します。

③ 納税地

・住所地、居所地、事業所等のいずれかを選択し、その住所と電話番号を記載します。電話番号は固定電話、携帯電話のどちらでも大丈夫です。

イ 納税地とは一般的には「住所地」になります。つまり、国内に住所がある人は、その住所地が納税地になります。

ロ 国内に住所がなくて居所がある人は、その「居所地」が納税地になります。一般的に居所とは、相当期間継続して居住しているものの、その場所との結びつきが住所ほど密接でないものを言います。例えば別荘などが該当します。

ハ 国内に住所又は居所のいずれかがある人が、その住所又は居所の他に「事業所等」がある場合には、住所地、居所地に代えてその事業所等の所在地を納税地にすることができます。

事業所等を納税地にする場合には、本来の納税地を所轄する税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出する必要があります。

④ 上記以外の住所地・事業所等

住所地、事業所等の両方が存在する場合に記載します。

イ 「納税地」の欄に住所地の住所を記入した場合 … この欄に事業所等の住所を記載します。

ロ 「納税地」の欄に事業所等の住所を記入した場合 … この欄に住所地の住所を記載します。

⑤ 氏名、生年月日

イ 氏名 … 氏名を記入し、押印をします。押印は認印、屋号印のどちらでも構いません。

ロ 生年月日 … 生年月日を記載します 。

⑥ 職業、屋号

イ 職業 … 職業を記入します。事業の種類により個人事業税の税率が変わります。税率は次のとおりです。

(出典:東京都主税局ホームページ)

これらの事業に該当しなければ個人事業税はかかりません。

ロ 屋号 … 屋号を記載します。屋号がなければ記載は不要です。

⑦ (棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法)については、次によることとしたので届けます

減価償却資産の評価方法の届出をする場合には、「減価償却資産の償却方法」を選択します。

⑧ 棚卸資産の評価方法

減価償却資産の償却方法の届出の場合は、記載不要です。

⑨ 減価償却資産の償却方法

イ 減価償却資産の取得日に応じて次の各欄を使用します。
  ⑴ 平成 19 年3月 31 日以前に取得した減価償却資産
  ⑵ 平成 19 年4月1日以後に取得した減価償却資産

ロ 減価償却資産の種類・設備の種類 … その選定する償却の方法を採用する資産の種類又は設備の種類を記載します。例えば、建物、建物附属設備、機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品などと記載します。

ハ 構造又は用途、細目 … その選定する償却の方法を採用する資産の構造又は用途、細目を資産の種類又は設備の種類ごとに記載します。例えば、木造、冷暖房設備、広告用、医療機器、その他のものなどと記載します。

(注)平成 10 年4月1日以後に取得した「建物」の償却方法は、旧定額法又は定額法に限ります。したがって、旧定率法又は定率法の選択はできません。

ニ 償却方法は次のように記載します

・その減価償却資産の取得年月日が平成 19 年3月 31 日以前の場合 … 旧定額法、旧定率法又は旧生産高比例法など

・その減価償却資産の取得年月日が平成 19 年4月1日以後の場合 … 定額法、定率法又は生産高比例法など

⑩ その他参考事項

(1) 「2 減価償却資産の償却方法」の欄に建物がある場合には、建物の取得年月日を記載します。

(2)には、届出をすることとなった事情等を記載します。

消費税課税事業者選択届出書、消費税課税期間特例選択届出書、消費税簡易課税制度選択届出書について

個人事業者は、原則として、開業1年目と2年目については消費税の免税事業者となります。そのため、開業をしたときに、「消費税課税事業者選択届出書」「消費税課税期間特例選択届出書」「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することは少ないと思われます。

そのため、ここでは概要のみの説明に留めておきます。

ただしこれらの届出書の提出の有無により、納税額に大きく影響を与える可能性がありますので、事業の状況に応じて提出が必要かどうかの検討は必ず行いましょう。

ご自身で判断できない場合には、早めに専門家に相談されることをおすすめします。

消費税課税事業者選択届出書

消費税の「課税事業者」を選択するための届出書になります。「課税事業者」とは分かりやすく説明すると、預かった消費税を国に納付する事業者のことです。
新規開業した場合は、原則として、開業年とその翌年は「免税事業者」となります。免税事業者とは、預かった消費税を納付しなくてもいい事業者です。そのため、通常「課税事業者」を選択することはありません。

ただし、開業初年度は業種によっては多額の内装工事費が発生したり、高額な設備を購入したりする場合があります。そのときに、売上で「預かった消費税」よりも内装工事費などで「支払った消費税」のほうが多いときは消費税の還付を受けることができます。還付を受けるための要件はいくつかあり、そのうちのひとつとして「課税事業者」でなければなりません。

つまり「免税事業者」の場合は、預かった消費税のほうが多くても納付する必要はありませんが、支払った消費税のほうが多くても還付を受けられないわけです。状況によって「課税事業者」を選択することを検討しましょう。

(留意点)

例えば、開業1年目に「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になった場合は、翌年(※)も課税事業者になります。そのため、翌年のときに預かった消費税のほうが大きければ、納付することになります。開業1年目だけでなく、2年目のことも考えて検討する必要があります。

(※)状況により、翌々年も「課税事業者」となる場合があります。

一定期間後、課税事業者を選択していた事業者が選択をやめようとする場合は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を期限までに提出します。

消費税課税期間特例選択・変更届出書

原則として、消費税の計算期間は、個人の場合、暦年(1月1日から12月31日)となります。 例外として、この届出をすることによって、1か月ごと又は3か月ごとに計算期間を区切って申告・納付することもできます。

一般的に納税は、資金繰りの点からも先に延ばしたほうがいいため、この届出書を提出し早期に納付することはありません。ただし、消費税が「還付」になる場合はこの届出書を提出するメリットがあります。すなわち、原則の1年ごとの申告よりも、1か月ごと、3か月ごとに申告したほうが「早期」に還付を受けられます。

留意点として、この特例を受けた場合には、2年間は短縮した計算期間毎に申告・納付(還付)をする必要があります。

一定期間後、課税期間の特例の適用をやめようとする場合には「消費税課税期間特例選択不適用届出書」を期限までに提出します。

消費税簡易課税制度選択届出書

消費税の簡易課税制度を選択するための届出書になります。消費税の計算方法として「本則課税」と「簡易課税」というものがあります。

1、 本則課税とは、「預かった消費税」から「支払った消費税」を控除し、残額を納付する方法です。

2、 簡易課税とは、「預かった消費税」から「預かった消費税 × 割合」を控除し、残額を納付する方法です。したがって「支払った消費税」は計算に影響しません。この「割合」は業種ごとに税法で定められていて、例えば小売業だと80%です。

簡易課税の計算例を見てみましょう。

(小売業の場合の計算例)

預かった消費税 300万円

300万円-300万円×80%=60万円 ← 納税額

本則課税または簡易課税のどちらの納税額が少なくなるかは、事業の状況によって異なります。届出書を提出しなければ「本則課税」となります。「簡易課税」を選択する場合は届出書を提出します。

留意点として、簡易課税を選択した場合は、原則として、2年間は簡易課税で計算することになります。

一定期間後、簡易課税制度の選択をやめようとする場合には、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を期限までに提出します。

本則課税、簡易課税の選択については、実務上判断が難しいポイントのひとつです。選択する際はよく検討しましょう。

繰り返しになりますが、消費税は届出書の提出の有無などで納税額が大きく変わる場合があります。分からないことがあれば早めに専門家に相談することをおすすめします。

【当事務所へのご依頼・お問合わせ】

個人事業を開業したときの税務署への届出書・申請書の提出について解説しました。開業当初は準備などで忙しく、届出書等の提出までなかなか手が回らないものです。

もし、ご自身で提出する時間がない場合には、当事務所で届出書等の作成、提出を承っております。また税務相談や顧問契約、確定申告書の作成・提出も承っております。

当事務所は東京都板橋区に所在しております。
対応地域は東京23区を中心に、その他の地域もオンラインや郵送により柔軟に対応しております。
どうぞお気軽にご相談ください。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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