法人成り①(個人事業の法人化)- 消費税について

法人成り①(個人事業の法人化)- 消費税について

この記事について

「法人成り ①」から「法人成り ⑨」までをまとめ、加筆したものを2020年12月10日に掲載しました。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年11月12日

事業を始める場合、まずは個人事業として始めることが多いと思います。徐々に規模が大きくなってくると、個人事業を法人にすることを検討するかもしれません。

法人成り(個人事業の法人化)にはメリット・デメリットがあります

第1回目の今日は、消費税の観点から法人化について見ていきたいと思います。

法人成りによる消費税の節税

法人成りをした場合、原則として、第1期目と第2期目の消費税については「免税事業者」となります。そのため、この2期分については消費税の申告・納付は必要ありません。このことは法人成りによるメリットです。

もう少し詳しく見てみましょう。

基準期間による判定

消費税を納める義務がある者を「課税事業者」といいます。いっぽう、消費税を納める義務がない者を「免税事業者」といいます。

どのような事業者が課税事業者となるのか、国税庁のホームページで確認してみましょう。

納税義務者(課税事業者)

 その課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者(課税事業者)となります。基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。

(出典:国税庁ホームページ)

繰り返しになりますが「課税事業者」に該当すると消費税の申告・納付が必要となります。

まず、前段を見てみましょう

その課税期間(個人事業者は暦年、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務者(課税事業者)となります。

これによると「基準期間」における課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になることが書かれています。

法人の場合、原則として「基準期間」は前々事業年度となります。例えば「前々事業年度」の課税売上高が1,500万円ならば、「当事業年度」は課税事業者になり、消費税の申告・納付をすることになります。

そうすると法人成りした場合、第1期目には前々事業年度の売上高がありません。そのため第1期目は「免税事業者」となり、申告・納付は必要ないことになります。これは第2期目も同様で、前々事業年度の売上高がないため「免税事業者」となります。

つまり、法人成りした場合、第1期目と第2期目は、原則として免税事業者に該当し、消費税の申告・納付は必要ないことになります。

特定期間による判定

次に、後段を見てみましょう。

基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。

前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下であっても、「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、免税事業者にならない旨が書かれています。法人の場合、原則として「特定期間」とは前事業年度開始の日以後6か月間の期間をいいます。

そうすると、第1期目は前事業年度がないため「特定期間」が存在せず、特定期間の売上高がないため、これにより課税事業者になることはありません。

第2期目はどうでしょうか。第2期目は第1期目があるため「特定期間」が原則として存在します。そのため、その「特定期間」の課税売上高が1,000万円を超える場合(※1)には、第2期目から課税事業者になります。

まとめるとこうなります。

① 法人成りをした第1期目、第2期目は原則として「免税事業者」となる。

② ただし、第2期目については特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合(※1)には、課税事業者となる。

(※1)特定期間における給与等支払額でも課税事業者の判定ができます。特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円以下ならば課税事業者に該当しません。

留意点

上記のように、法事成りをした第1期目と第2期目は、原則として免税事業者になりますがいくつか留意点があります

① 第1期目、第2期目に多額の設備投資が見込まれる場合などは、あえて課税事業者を選択し、消費税の還付を受けたほうが良いときがあります。この場合には、第3期目以降の状況も考慮する必要があり、判断が複雑になっています。

② 期首資本金が1,000万円以上の場合には第1期目、第2期目であったとしても課税事業者になります。

③ 特定新規設立法人に該当する場合には、第1期目、第2期目であったとしても課税事業者になります。

今日のポイントをまとめます。

① 法人成りをした場合、第1期目と第2期目は基準期間がないため免税事業者になる可能性が高い。
② ただし、第2期目については特定期間の売上高等の判定で課税事業者になる可能性がある。
③ 第1期目と第2期目に多額の設備投資が見込まれる場合など、消費税の還付を受ける場合は、あえて課税事業者を選択したほうが良い場合もある。その場合は、第3期目以降の状況も考慮する必要がある。
④ 上記のほかにも、期首資本金が1,000万円以上の場合や、特定新規設立法人に該当する場合には、第1期目と第2期目について免税事業者となれない。

法人成りをした場合、第1期目と第2期目が免税事業者になるのは、節税効果が大きいと思われます。

ただし、期首資本金の額などに注意をしないと、場合によっては課税事業者となってしまいます。2期分免税事業者となれるのか事前に検討しましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年11月12日)