法人の節税対策 その6(その他)

法人の節税対策 その6(その他)

この記事について

「法人の節税対策 その1」と「その6」までをまとめ、加筆したものを2020年12月6日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

法人の節税対策

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年11月10日

法人の節税対策の連載も今回が最終回になります。これまでに紹介してきたもの以外で節税対策として検討するものをいくつかご紹介します。

貸倒引当金

期末において売掛金などの金銭債権がある場合には貸倒引当金を設定することができます。貸倒引当金とは、簡潔に説明すると翌期以降に発生する可能性のある売掛金等の貸倒れによる損失を、当期において計上するものです。

当期において損失計上できるため、これが損金となり節税効果が期待できます。

期末に売掛金等の債権がある場合には、その債権に対し貸倒引当金を設定できる可能性がありますので、確認してみましょう。

税込経理をしている場合の消費税の未払計上

消費税の経理方式には、「税抜経理方式」と「税込経理方式」とがあります。

・税抜経理方式
 本体価格と消費税部分を区分して経理する方式になります。

・税込経理方式
 本体価格と消費税部分を区分せずに、合計額で経理する方式になります。

消費税は、原則として年1回、消費税の申告書を提出し納付を行うことになります。納付する消費税は「税込経理方式」を採用している場合には損金(※1)となります。この損金となるタイミングは次のとおりです。

(原則)消費税の申告書を提出したとき
例えば、3月決算の会社で5月に消費税の申告書を提出した場合には、その3月決算では損金になりません。翌期の5月に申告書を提出したときの損金となります。

(特例)消費税の額を未払計上したとき
消費税の額を損金経理により未払計上した場合には、その計上した事業年度の損金にできます。

そのため、決算において消費税の額を未払計上することによって、原則よりも早期に損金計上することができます

(※1) 「損金」とは法人税法の用語です。「損金」は「費用」とほぼ同じ意味ですが、一部異なる取り扱いもあります。ちなみに法人税を計算する際の所得は、以下のように計算されます。
(計算式) 所得 = 益金 - 損金

固定資産の除却

使用していない固定資産がある場合は、除却することを検討しましょう。除却することで、固定資産の帳簿価額を固定資産除却損として損金にすることができます。除却の方法として、廃棄のほか、有姿除却という方法も認められています。

(有姿除却)

次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であっても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができます。

① その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産

② 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

創立費・開業費償却

創立費や開業費が繰延資産として帳簿に残っている場合には、これらを償却することによって節税効果が見込まれます。

【創立費や開業費を支出したときの取り扱い】

・支出時の損金とする、または

・繰延資産として資産計上し翌年以後に償却する

創立費と開業費を繰延資産とした場合、いくら償却するかは法人の任意です。そのため、帳簿に残っている金額を全額償却して損金とすることも可能です。

10万円未満の資産の取得

固定資産を取得した場合には、通常、資産計上し減価償却(※2)を行っていくことになります。ただし、取得価額が10万円未満の器具備品などの資産を取得し、事業の用に供した場合には、その事業の用に供したときの損金にすることができます

ちなみに、10万円未満の判定にあたり消費税は含むのかどうかという疑問があると思います。過去の記事(法人の節税 その3)で解説しましたが、復習も兼ねてもう一度解説します。


① 税抜経理の場合 … 「税抜き」で10万円未満の判定をする
② 税込経理の場合 … 「税込み」で10万円未満の判定をする

例えば、税抜価格95,000円、税込価格104,500円の場合の判定は次の通りです。

① 税抜経理の場合 … 税抜価格が 95,000円のため、100,000円未満となる
② 税込経理の場合 … 税込価格が104,500円のため、100,000円未満とならない

取得しただけでは損金にできず、事業の用に供する必要がある点にも注意しましょう。

(※2) 減価償却とは
例えば、決算月が12月の会社で1月に20万円のパソコンを買った場合には、原則として一旦資産計上し、4年に渡って毎年5万円ずつ経費にしていきます。このように一旦資産計上し、その資産の耐用年数(国が定めたその資産を使用できる年数)によって、毎年、経費計上することを減価償却といいます。

今日のポイントをまとめます。

これまでに紹介したもの以外にも次のような節税対策がある
① 貸倒引当金の計上
② 消費税の未払計上(税込経理の場合)
③ 固定資産の除却
④ 創立費・開業費の償却
⑤ 10万円未満の資産の取得

6回にわたって法人の節税を見てきました。

金銭の支出を伴う節税を行う前提として、その支出により売上アップに貢献するのか、業務効率が良くなるのかなどを良く検討しましょう。無理な節税をせずに法人税等の税金を支払って、残りを将来の資金として蓄えておいたほうがいいかも知れません。

例えば、10万円未満の資産を取得して税金が減ったとしても、それが売上アップや業務効率につながらなければ意味がありません。このことを良く考えて上手に節税をしましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年11月10日)