この記事について
「法人の節税対策 その1」と「その6」までをまとめ、加筆したものを2020年12月6日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。
法人の節税対策
法人の節税対策につき、今回は経営セーフティー共済(中小企業倒産防止共済制度)を解説していきます。まずは概要から見ていきましょう。
経営セーフティー共済の概要
「経営セーフティー共済」とは独立行政法人 中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」といいます)が運営する共済制度です。
この共済制度は、取引先事業者が倒産(※1)した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度となっています。無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れができ、掛金は損金に算入することができます。
経営セーフティ共済は、継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、一定の加入要件に該当する場合に加入できます。
(※1)この制度の倒産とは、法的整理、私的整理などが該当しますが、夜逃げは該当しません。
経営セーフティー共済の特徴
この共済制度の特徴は次のとおりです。
特徴 ①
取引先が倒産した場合は、売掛金などが回収できずに運転資金に影響を及ぼすことが考えられます。そのような場合に、この共済制度に加入していればその取引先との取引の確認が済み次第、すぐに借入れができます。
特徴 ②
共済金の借入れは、無担保・無保証人で受けることができます。共済金貸付額は納付した掛金総額の10倍まで(※2)となっています。
(※2)最高8,000万円。かつ、回収困難となった売掛金債権等の額が限度となります。
特徴 ③
掛金は月5,000円 ~ 月200,000円の間で選ぶことができ、納付した掛金は損金にすることができます。掛金は掛金総額が800万円に達するまで積み立てることができます。
特徴 ④
共済契約を解約した場合には解約手当金を受け取れます。自己都合の解約の場合でも次のように納付した掛金が戻ります。
・掛金を12か月以上納めている場合 … 掛金総額の8割以上が戻ります
・掛金を40か月以上納めている場合 … 掛金全額が戻ります
節税の観点からは「特徴 ③」が重要です。掛金は月5,000円 ~ 月200,000円となっているので、最高で年2,400,000円(月200,000円 × 12か月)を掛金として支払うことができます。かつ、その支払った金額を損金とすることが可能です。
更に、1年以内の前納掛金は払い込んだときの損金にできます(※3)。したがって事業年度終了の前に、1年分として2,400,000円を納付すればその全額を損金にすることができます。
(※3)前納の期間が1年を超えるものは、決算期において、期間の経過に応じて損金にすることができます。
共済金について
取引先が倒産し、回収が困難になった売掛金債権等や前渡金返還請求権(以下「被害額」といいます)がある場合には、共済金の借入れを受けることができます。貸付金や融通手形、不動産賃貸料などは対象にならないので注意しましょう。また取引先に対し買掛金などの債務がある場合には、被害額と相殺されます。
借入限度額
借入限度額は、次の額のうちいずれか少ない金額になります。
① 被害額
② 掛金総額の10倍に相当する額
返済期間
返済期間は次の表のとおりです。
借入額 | 返済期間(6か月の据置期間を含む) |
5,000万円未満 | 5年 |
5,000万円以上 6,500万円未満 | 6年 |
6,500万円以上 8,000万円以下 | 7年 |
利率
借入れは無利子です。ただし借入れをした場合には、借入額の10分の1に相当する金額が、払い込んだ掛金から控除されます。
例えば、払い込んだ掛金が500万円あり、取引先の倒産で5,000万円の借入れをしたとしましょう。払い込んだ掛金500万から500万円(5,000万円 × 1/10)が控除されることになります。そのため無利子とはなっていますが、この場合控除された500万円が利子に相当すると考えることもできます。
一時貸付金について
取引先が倒産していない場合でも、臨時に事業資金を必要とする場合に、解約手当金の95%を上限として借入れができます。借入限度額は次のとおりです。
掛金納付月数 | 一時貸付金の借入限度額 |
1か月 ~ 11か月 | 0円 |
12か月 ~ 23か月 | 掛金総額 × 75% × 95% |
24か月 ~ 29か月 | 掛金総額 × 80% × 95% |
30か月 ~ 35か月 | 掛金総額 × 85% × 95% |
36か月 ~ 39か月 | 掛金総額 × 90% × 95% |
40か月以上 | 掛金総額 × 95% × 95% |
掛金総額が800万円の場合 | 800万円 × 100% × 95%(760万円) |
解約手当金について
解約した場合には解約手当金を受けることができます。解約手当金の支給率は、解約理由によって異なります。
① 任意契約
契約者が任意でする解約です。いつでも任意で解約できます。
② みなし解約
法人の解散等があった場合に、その時点で解約されたものとみなす場合です。
③ 機構解約
掛金の滞納などがあった場合に、中小機構が行う解約です。
それぞれの支給率は次の表のとおりです。
掛金納付月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
1か月 ~ 11か月 | 0% | 0% | 0% |
12か月 ~ 23か月 | 80% | 85% | 75% |
24か月 ~ 29か月 | 85% | 90% | 80% |
30か月 ~ 35か月 | 90% | 95% | 85% |
36か月 ~ 39か月 | 95% | 100% | 90% |
40か月以上 | 100% | 100% | 95% |
法人税の申告書への記載
経営セーフティ共済に加入し、掛金を支払って損金にした場合には、法人税の申告書への記載が必要になります。忘れずに記載するようにしましょう。
今日のポイントをまとめます。
① 掛金は損金に計上することができる
② 掛金は月5,000円~月200,000円となっており、最高で年2,400,000円
(掛金総額は8,000,000円が上限)
③ 1年以内の前納については払い込んだときの損金にできる
経営セーフティー共済は連鎖倒産を防止するためのものですが、節税対策としても利用できます。より詳しい情報が中小機構のホームページに掲載されていますので、この共済への加入に興味がある方はこちらも確認してみましょう。
それではまた次回よろしくお願いします。
(公開日:2020年11月9日)