法人の節税対策 その3(少額減価償却資産の特例)

法人の節税対策 その3(少額減価償却資産の特例)

この記事について

「法人の節税対策 その1」と「その6」までをまとめ、加筆したものを2020年12月6日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

法人の節税対策

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年11月5日

法人の節税対策 3回目です。今回は器具備品、機械装置など(パソコン、プリンター、エアコン等)の資産を取得することによる節税を紹介します。

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

10万円以上の資産を取得した場合には、原則として、取得した年に全額を経費計上することはできません。資産計上をしたうえで減価償却(※)を行うことになります。

ただし一定の要件を満たしている場合には、30万円未満の資産については取得した年に全額を経費計上することができます。この特例のことを「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といいます。

※ 減価償却とは
例えば、20万円のパソコンを取得した場合には、4年に渡って毎年5万円ずつ(期首月に事業の用に供した場合)経費に計上していきます。このようにその資産の耐用年数(国が定めたその資産を使用できる年数)によって、毎年、経費計上することを減価償却といいます。

まず、国税庁のホームページからこの特例の概要を確認しましょう。

特例の概要

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日から令和4年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。

(国税庁のホームページより引用)

ここでは、「中小企業者等」が30万円未満の減価償却資産を取得して、かつ、事業の用に供した場合には、その金額を損金にできる旨が書かれています。中小企業者等とはどのような法人なのかを次に見てみましょう。

適用対象法人

この特例の対象となる法人は、青色申告法人である中小企業者又は農業協同組合等で、常時使用する従業員の数が1,000人以下(令和2年4月1日以後に取得などする場合は500人以下とされ、連結法人が除かれます。)の法人に限られます。

(国税庁のホームページより引用)

ここでは、「青色申告法人である中小企業者」が対象であることが書かれています。その後に従業員数の要件が付記されています。

次にどのような法人が「中小企業者」に該当するかが書かれています。

中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。なお、平成31年4月1日以後に開始する事業年度においては、中小企業者のうち適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。)に該当するものは除かれます。

(1) 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人
イ その発行済株式又は出資(平成31年4月1日以後に開始する事業年度においては、自己の株式又は出資を除きます。以下同じです。)の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人

(国税庁のホームページより引用)

イの後にも引き続き要件が記載されていますが割愛しています。通常は、資本金の額が1億円以下の法人であれば中小企業者に該当します。

ただし、「事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人」や、「大規模な法人により、その法人の一定数の株式が保有されている法人」などの場合には、資本金が1億円以下であっても中小企業者に該当しない例外がありますので注意しましょう。

次にどのような資産が特例の対象になるのか見てみましょう。

適用対象資産

この特例の対象となる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産(以下「少額減価償却資産」といいます。)です。

ただし、適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円(事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額。月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とします。以下同じです。)を超えるときは、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。

(国税庁のホームページより引用)

取得価額が30万円未満の減価償却資産が対象になります。

ただし後段で、損金にできる金額の上限が定められており、1年間の少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円までとなっています。括弧内では、事業年度が1年に満たない場合には300万円を月数按分した金額が限度になることが書かれています。

ちなみに、30万円未満の判定にあたり消費税は含むのかどうかという疑問があると思います。これは消費税の経理方式で異なっており、次のようになります。

① 税抜経理の場合 … 「税抜き」で30万円未満の判定をする
② 税込経理の場合 … 「税込み」で30万円未満の判定をする

例えば、税抜価格290,000円、税込価格319,000円の場合の判定は次の通りです。

① 税抜経理の場合 … 税抜価格が290,000円であり、300,000円未満であるため、少額減価償却資産に該当する
② 税込経理の場合 … 税込価格が319,000円であり、300,000円以上であるため、少額減価償却資産に該当しない

このように同額の資産を取得したとしても、経理方式により30万円未満の減価償却資産に該当するか否かが異なるため注意しましょう。

その他の要件

その他の主な要件を以下に挙げます。

・購入しただけでは要件を満たさず、事業の用に供することが必要
・少額減価償却資産の取得価額に相当する金額につき損金経理をすること
・確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して申告すること

留意点として、10万円未満の器具備品、機械装置などの資産を取得し事業の用に供した場合には、この30万円未満の特例によらなくても、その全額を損金にすることができます。そのため、資産の金額が10万円以上30万円未満のときに、この特例を使うかどうか判断することになります。

最後に今日のポイントをまとめます。

① 30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、一定の要件のもと、その全額を損金にできる
② 主な要件は次のとおり
・資本金1億円以下の青色申告をしている法人であること
・30万円未満の減価償却資産を取得し、事業の用に供したこと
・損金経理をすること
・確定申告書に明細書を添付すること

今回は「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」を紹介しました。節税対策としてこの特例の活用を検討してみましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年11月5日)