この記事について
「法人の節税対策 その1」と「その6」までをまとめ、加筆したものを2020年12月6日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。
法人の節税対策
昨日に引き続き法人の節税対策について解説します。当期中に役務の提供(サービスの提供)を受けているが、期末において未払いとなっている場合があります。その場合、決算において未払費用として計上することで、当期の損金(※)とすることができます。ここでは、「社会保険料の未払計上」と「固定資産税の未払計上」を中心に見ていきます。
(※) 「損金」とは法人税法の用語です。「損金」と「費用」はほぼ一致しますが、一部異なる取り扱いもあります。ちなみに法人税を計算する際の所得は、以下のように計算されます。
(計算式) 所得 = 益金 - 損金
社会保険料の未払計上
社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は、「従業員から預かった保険料」と「会社負担分の保険料」を合わせて納付します。社会保険料の納付は、原則として、翌月の末日に納付します。例えば、3月分の社会保険料は4月末日が納付期限となります。
3月決算の法人の場合、3月分の社会保険料は期末時点(3月31日)で未払いとなっています。この社会保険料はいつの時点の損金になるのでしょうか?
これについての通達(※)があるので見てみましょう。
(※)通達とは、課税庁(税務署)内部での税法の解釈や運用指針が示されたものと考えて頂ければ結構です。あくまで内部規定であり法律ではありません。通達のとおりの税務処理を行っておけば、税務調査があっても、問題になることが少なくなります。
(社会保険料の損金算入の時期についての通達)
9-3-2 法人が納付する次に掲げる保険料等の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。(昭55年直法2-15「十三」、平15年課法2-22「九」、平16年課法2-14「十」、平26年課法2-6「四」により改正)
(1) 健康保険法第155条《保険料》又は厚生年金保険法第81条《保険料》の規定により徴収される保険料
(2) 旧効力厚生年金保険法第138条《掛金》の規定により徴収される掛金(同条第5項《設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収》又は第6項《解散時の掛金の一括徴収》の規定により徴収される掛金を除く。)又は同法第140条《徴収金》の規定により徴収される徴収金
(注) 同法第138条第5項又は第6項の規定により徴収される掛金については、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
(国税庁ホームページより引用)
1行目から3行目に次のように書いてあります。
これにより3月決算の法人の場合、3月分の社会保険料が3月31日時点で未払いであったとしても、未払計上することよってその3月決算の損金にすることが認められていることが分かります。
損金にすることができるのは、あくまで会社負担分であることに注意しましょう。
固定資産税の未払計上
固定資産税について
固定資産税とは、家屋や土地などの不動産を所有している場合にかかる税金です。固定資産税は、毎年1月1日時点での所有者に対して課税されます。
納税通知書は4月~6月頃に発送されてきます。納付は4回の分割になっており、それぞれの納期限は、6月、9月、12月、翌年2月(東京都の場合)となっています。ただし、全額を一括で納付することもできます。
納期限が到来していない固定資産税の額の未払計上
さて、固定資産税はの納付方法として、分割納付と一括納付がありますが、損金となるのはどの時点なのでしょうか?これについて国税庁のホームページに記載がありますので見てみましょう。
(租税公課の損金算入時期)
(2) 賦課課税方式による租税
不動産取得税、自動車税、固定資産税、都市計画税などの賦課課税方式による租税については、賦課決定のあった事業年度となります。
ただし、納期の開始日の事業年度又は実際に納付した事業年度において損金経理をした場合には、その損金経理をした事業年度となります。
(国税庁のホームページより引用)
これにより、次の3つの時点で損金にできることが分かります。
① 賦課決定のあった事業年度
② 納期の開始日の事業年度
③ 実際に納付した事業年度
もう少し具体的に見ていきます。
①の「賦課決定のあった事業年度」とは納税通知書が交付された日(納税通知書が到着した日)となります。したがって、決算日において未納となっている金額を未払計上することにより、この交付された日の属する事業年度に固定資産税の全額を損金にすることができます。
②の「納期の開始日の事業年度」とは、固定資産税を年4回で分割納付する場合、納期は次のように定められています。
(例)6月1日から6月30日まで(納期限 6月30日)
従ってこの場合、納期限までに未納であったとしても未払計上することにより、納期の開始日である6月1日の属する事業年度の損金にできることになります。
③の「実際に納付した事業年度」とは、固定資産税を実際に納付したときの損金になるということです。
法人の節税を考えた場合、①の「賦課決定のあった事業年度」で4期分の全額を損金にすると、もっとも利益を減らすことができます。
その他の未払計上
上記の他に、決算において未払費用として計上を検討するものの一例を挙げます。
・水道光熱費
・電話料金
・インターネット料金など
最後に今日のポイントをまとめます。
② 固定資産税は、賦課決定のあった事業年度に4期分全額を損金とすることができる
明日も引き続き、法人の節税について解説したいと思います。
それではまた次回よろしくお願いします。
(公開日:2020年11月4日)