この記事について
「役員報酬を支給する際の注意点 その1」と「その2」をまとめ、加筆したものを2020年12月5日に公開しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。
役員報酬を支給する際の注意点
前回は、役員報酬を損金にするためには「定期同額給与」に該当する必要があるという解説をしました。定期同額給与以外にも役員報酬の額を損金にする方法があり、そのひとつに「事前確定届出給与」というものがあります。詳しく見ていきましょう。
事前確定届出給与の概要
「事前確定届出給与」とは、「いつ」「いくら」支払うかを事前に税務署に届出をするもので、そのとおりに支給をするとその支給額を損金にできるものです。
この規定の使いどころとして、例えば役員にも従業員と同じ時期に賞与を支給したい場合があります。「定期同額給与」は毎月同額の支給が要件となっています。そのため、役員に賞与を支給すると毎月同額とならないため、その賞与の支給は損金にできないことになります。対応策として、従業員の賞与の支給日に合わせて「いつ」「いくら」支払うかを記載したこの届出書を税務署に提出しておけば、役員に支給する賞与を損金にすることができます。
事前確定届出給与に該当するための要件
「事前確定届出給与」に該当するには、どのような要件を満たせばいいのか国税庁のホームページを見てみましょう。まずは「事前確定届出給与」とは何であるかの説明です。
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含みます。以下同じです。)若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式若しくは特定新株予約権を交付する旨の定め(以下「事前確定届出給与に関する定め」といいます。)に基づいて支給される給与で、1の定期同額給与及び3の業績連動給与のいずれにも該当しないもの(承継譲渡制限付株式又は承継新株予約権による給与を含み、次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次に定める要件を満たすものに限ります。)をいいます。
(国税庁ホームページより引用)
難しいですね。まずは、括弧の内容を外してみましょう。
まだ、長いですね。
通常、役員報酬の支払いは金銭で行われることが多いと思いますので、株式などの部分も外してみましょう。
だいぶ分かりやすくなりました。これで「所定の時期」に「確定した額の金銭」を支給する給与のことを事前確定届出給与と言うことが、国税庁のホームページからも分かりました。例えば7月10日に100万円を代表取締役Aに支払うといった具合です。
事前確定届出給与に関する届出期限
役員に対し「事前確定届出給与」を支給するには、事前に税務署への届け出が必要となります。
(1) 原則
事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、次のイ又はロのうちいずれか早い日(新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務についてその定めをした場合にはその設立の日以後2か月を経過する日)までに所定の届出書を提出する必要があります。
イ 株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日
ロ その会計期間開始の日から4か月(確定申告書の提出期限の延長の特例に係る税務署長の指定を受けている法人はその指定に係る月数に3を加えた月数)を経過する日
(国税庁ホームページより引用)
簡潔に解説すると、次のいずれか早い日までにこの届出書を税務署に提出しなければなりません。
① 株主総会などで、事前確定届出給与を支給することを決議した日から1月以内
② 期首から4か月以内
※ 上記国税庁ホームページ記載の括弧の内容は割愛しています
法人税が役員報酬の支給額に制限をかけている理由は、利益操作の防止でした。この届出書により、事前に「支給日」と「支給時期」を税務署に伝えておけば、利益操作のための支給とはならないため、損金にすることを認めているわけです。
また、一定の事由が生じた場合には、別途、届出期限が定められています。
不相当に高額な部分の金額
「定期同額給与」と同様に「事前確定届出給与」の場合も、不相当に高額な部分の金額については損金に算入することができません。
業績連動給与について
「業績連動給与」とは、会社の業績に連動して役員報酬の額が算定される制度です。
業績連動給与を取り入れるには、原則として同族会社に該当しないことや、算定方法を有価証券報告書などに記載するなどの要件をクリアする必要があります。
ここでの詳しい説明は割愛しますが、業績が上がれば報酬が増えることは役員に対する動機付けになるため、興味がある場合は導入を検討してみましょう。
それではまた次回よろしくお願いします。
(公開日:2020年10月30日)