この記事について
「マイホームの購入・売却に関する税金 その3」から「その5」までをまとめ、加筆したものを2020年12月4日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。
マイホームの〈売却〉に関する税金
「マイホームの購入・売却に関する税金 その5」を見ていきましょう。昨日まではマイホームを売却して利益が出たときの税金対策について説明してきました。ただし、マイホームを売却したときに残念ながら損失になる場合もあると思います。この場合に、その損失を他の所得から控除できる特例が定められています。これを「損益通算」といいます。
さらに、売却した年に損益通算しても損失が残ってしまう場合には、翌年以後3年間に限り、その損失を繰り越すことができます。これを「繰越控除」といいます。
「損益通算」と「繰越控除」の適用を考える場合、住宅の買い替えをしない場合と、住宅の買い替えをする場合の2種類があります。
まずは、「住宅の買い替えをしない場合」を見ていきましょう。
※ 以下に挙げた要件は主なものになります。
「住宅の買い替えをしない場合」の損益通算と繰越控除
住宅を売却して損失(譲渡損失)が生じた場合には、その損失を給与所得や事業所得などの他の所得から控除することができます。これを「損益通算」といいます。
さらに、売却した年に損益通算しても、控除しきれない損失が残ってしまう場合には、翌年以後3年間にわたってその損失を繰り越すことができます。これを「繰越控除」といいます。
特例の適用ができる場合
住宅の買い替えをしない場合には、まず、以下の①と②の両方の要件を満たす必要があります。
① 住宅の売却価額が、残っている住宅ローンの残額に満たなかった
② その住宅の売却により譲渡損失となった
特例の適用要件
上記以外に、この特例の適用を受けるための要件の一例を以下に挙げます。これまで見てきたマイホームの特例関係の要件と似ているものも多いですね。
① 売却年の1月1日現在で、所有期間5年超の住宅であること
② 売買契約日の前日において、売却した住宅に係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること
③ 繰越控除を適用する年分の所得が3,000万円以下であること
④ 住宅を売却する前年、前々年に「居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除」などの特例を適用していないこと
⑤ 親子や夫婦など、特別の関係がある人に対する住宅の売却ではないこと
損益通算の限度額
住宅の売却により生じた譲渡損失の金額を他の所得と損益通算できますが、これには一定の限度額が定められています。限度額の計算は以下のとおりです。
(計算式)
① 住宅の売買契約日の前日における住宅ローンの残高
② 住宅の売却代金
③ ① - ② = 損益通算限度額
つまり、売却代金で返済しきれなかった住宅ローンの金額相当額が限度となっています。
特例の適用手続
この特例を受けるためには確定申告が必要です 。確定申告書に必要書類を添付して税務署に提出します。必要書類の一例を以下に挙げます。
① 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
② 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
③ 売却したマイホームに関する次の書類
イ 登記事項証明書や売買契約書の写しなど
ロ「譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書」(売買契約日の前日のもの)
④ 戸籍の附票の写しなど(住民票に記載されている住所と売却した物件の所在地が売買契約締結日の前日において異なる場合に必要)
繰越控除
損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、確定申告書の提出など一定の要件のもの、譲渡の年の翌年以後3年目まで繰り越し、他の所得から控除することができます。
「住宅の買い替えをする場合」の損益通算と繰越控除
住宅の買い替えをした場合にも、「損益通算」と「繰越控除」の特例が用意されています。
住宅の買い替えをして、この「損益通算」と「繰越控除」の特例の適用を受け場合は、今まで住んでいた住宅に対して住宅ローン残高が残っているかどうかは要件ではありません。その代わり、取得する住宅についての要件が加わります。
特例の適用ができる場合
住宅の買い替えをすることが前提となります。
特例の適用要件
特例の適用を受けるためには上記以外にも要件がありますが、ここでは取得する住宅(買換資産)についての要件を中心にいくつか見てみましょう。
① 今まで住んでいた住宅を売却する前年から翌年中の間に、買換資産を取得すること
② 買換資産の床面積が50㎡以上であること。
③ 買換資産を取得した年の翌年12月31日までに居住の用に供すること(又は供する見込みであること)
④ 買換資産を取得した年の12月31日において、その住宅について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること
上記のように、今まで住んでいた住宅に対する住宅ローンの残高があるかどうかは要件ではありませんが、取得する住宅について住宅ローンを有することが要件となります。
特例の適用手続
この特例を受けるためには確定申告が必要です 。確定申告書に必要書類を添付して税務署に提出します。必要書類の一例を以下に挙げます。
① 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
② 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
③ 売却したマイホームに関する次の書類
イ 登記事項証明書や売買契約書の写しなど
ロ 戸籍の附票の写しなど(住民票に記載されている住所と売却した物件の所在地が売買契約締結日の前日において異なる場合に必要)
④ 購入したマイホームに関する次の書類
イ 登記事項証明書や売買契約書の写しなど
ロ 年末における住宅借入金等の残高証明書
ハ 確定申告書の提出の日までに買い換えた住宅に住んでいない場合には、住まいとして使用を開始する予定年月日その他の事項を記載したもの
繰越控除
損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、確定申告書の提出など一定の要件のもの、譲渡の年の翌年以後3年目まで繰り越し、他の所得から控除することができます。
マイホームを売却して損失が出た場合の特例について確認しました。損失が出てしまったときに、他の所得からその損失を控除して、税金を減らすことができるという大変有利な特例となっています。要件に該当するか確認し、積極的に特例を活用していきましょう。
それではまた次回よろしくお願いします。
(公開日:2020年10月23日)