マイホームの購入・売却に関する税金 その4(特定の居住用財産の買換えの特例)

マイホームの購入・売却に関する税金 その4(特定の居住用財産の買換えの特例)

この記事について

「マイホームの購入・売却に関する税金 その3」から「その5」までをまとめ、加筆したものを2020年12月4日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください

マイホームの〈売却〉に関する税金

「マイホームの購入・売却に関する税金 その4」について見ていきましょう。本日もマイホームを譲渡した場合の税金に関してご説明します。マイホームを譲渡した場合は税金を減らすことができる特例がいくつかあります。今日見ていくのはマイホームを買い換えた場合の「特定の居住用財産の買換えの特例」です。

早速見ていきましょう。

特定の居住用財産の買換えの特例

昨日、不動産を売却すると税金(所得税・住民税)がかかるというお話をしました。そのため、マイホームを買い換えるときも、住宅の売却によって利益が出れば税金がかかるのが原則です。そうすると、納税により新しい住宅の購入資金が減少して買い換えに影響する可能性があります。そのため、一定の要件を満たした場合には、売却益に対する税金を将来に繰り延べることができます。この制度を「特定の居住用財産の買換えの特例(以下「買替え特例」といいます)」といいます。

どのくらい税金が減少するか

この特例を適用した場合どのくらい税金が減少するかは、「今まで住んでいた住宅(譲渡資産)の売却価格」と「新しく購入する住宅(買換資産)の購入価格」のどちらが大きいかで変わってきます。

① 購入価格のほうが大きい場合(売却価格 ≦ 購入価格)

この場合は、今まで住んでいた住宅を売却したときの税額は0円となります。

ただし、税金が免除になったわけではなく、税金の支払いを繰り延べる制度になります。そのため、新しく購入した住宅を将来売却すると繰り延べた部分も考慮して税額が計算されます。

② 購入価格のほうが小さい場合(売却価格 > 購入価格)

この場合には、売却代金のうち、新しい住宅の購入代金を上回る部分に対して税金がかかります。算式は以下のとおりです。①と同様に、税金の支払いの繰り延べとなります。

(譲渡所得の算式)

イ、収入金額 …(売却価格 - 購入価格)
ロ、必要経費 …(譲渡資産の取得費 + 譲渡費用)× 収入金額 ÷ 売却価格
ハ、譲渡所得 …(イ - ロ)

(税額計算)

ニ、所得税 譲渡所得 × 15%(※1)
ホ、住民税 譲渡所得 × 5%

納める税額は、ニとホの合計額となります。

(※1) 所得税には復興特別所得税(所得税 × 2.1%)が加算されます。(以下同様)

特例を受けるための適用要件

この特例を受けるための要件の一例は以下のとおりです。

1、売却する住宅の要件
 ① 売却する住宅は自分が住んでいたもの
 ② 売却した年の1月1日現在で、所有期間が10年超
 ③ 売却した年の1月1日現在で、実際に居住した期間が10年以上
 ④ 売却代金が1億円以下であること

2、購入する住宅の要件
 ① 住宅を売却した年の前年から翌年までの3年の間に住宅を買い換えること
 ② 購入する住宅の建物の床面積が50㎡以上
 ③ 購入する住宅の土地の面積が500㎡以下

 ④ 買い換えた住宅には、取得した時期により次の期限までに住むこと
  イ 売却した年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで
  ロ 売却した年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで

 ⑤ 買い換える住宅が、耐火建築物の中古住宅である場合
  イ 取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または
  ロ 一定の耐震基準を満たすものであること。

主な要件を挙げましたが、売却する住宅、購入する住宅の両方に要件があるため、かなり数が多いですね。判断に迷ったときは専門家に相談しましょう。

適用を受けるための手続

この特例を受けるためには確定申告が必要です 。確定申告書に必要書類を添付して税務署に提出します。必要書類の一例を以下に挙げます。

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
・売却した土地、家屋の登記事項証明書
・購入した土地、家屋の登記事項証明書
・売買契約書、など

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例」との選択適用

買い換えの特例は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例(以下「3,000万円控除の特例」といいます)と同時に受けることはできません。したがって、どちらの特例を受けたほうが有利か検討したうえで選択する必要があります。

譲渡所得が3,000万円以下の場合

「3,000万円控除の特例」を適用すれば税額は0円となります。

譲渡所得が3,000万円超の場合

この場合はどちらの特例を受けたほうが有利か、検討する必要があります。ポイントは「買替え特例」は税金の支払いの繰り延べであるため、買い換えた住宅を将来売却するときは、その時点で繰り延べた部分も考慮して税額が計算されます。

「買替え特例」のメリット・デメリットをいくつか挙げてみます。

メリット
・ 買い替え時に税負担がないか、少なくなる
・ そのため購入代金に充てられる金額が多くなる

デメリット
・ 税金の免除ではなく、課税の繰り延べとなる
・ そのため、買い換えた住宅を将来売却したときに繰り延べた部分も考慮して税額が計算される

「3,000万円控除の特例」と「買換えの特例」のどちらを選択するか慎重に検討しましょう。

今回は「特定の居住用財産の買換えの特例」を見てきました。この特例は受けるための要件が多かったり「3,000万円控除の特例」との有利不利選択が必要であったりと複雑でした。相談や申告について当事務所でも承っておりますのでお気軽にお問合わせください。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年10月22日)