マイホームの購入・売却に関する税金 その3(居住用財産の3,000万円控除)

マイホームの購入・売却に関する税金 その3(居住用財産の3,000万円控除)

この記事について

「マイホームの購入・売却に関する税金 その3」から「その5」までをまとめ、加筆したものを2020年12月4日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください

マイホームの〈売却〉に関する税金

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年10月21日

マイホームの購入に関する税金について、2日間にわたって見てきました。3日目の今日はマイホームを譲渡した場合の税金についてご説明したいと思います。不動産を売却した場合には、所得税と住民税がかかります。マイホームを売却した場合には、この所得税と住民税に対する各種特例が設けられており、特例を適用できれば税金を減らすことができます。不動産の譲渡は税金が多額になる傾向があるため、積極的に適用していきましょう。

それでは早速見ていきます。

※ 以下に挙げた要件は主なものになります。

不動産を売却した場合の税金

土地や建物を売却して利益となった場合には、その利益に対して所得税と住民税がかかります。これはマイホームを売却した場合でも、別荘などを売却した場合でも同様です。

所得税法ではこの利益のことを譲渡所得と呼んでいます。譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。

 収入金額 - 取得費 -譲渡費用 =譲渡所得

「取得費」とは売却した住宅の購入代金(※1)が主なものになります。
「譲渡費用」とは仲介手数料などの売却に要した費用です。

この譲渡所得に税率を乗じて所得税と住民税を計算します。
税率は不動産の所有期間により異なっています。

(※1)建物部分については、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いたあとの金額になります。

所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)

所有期間が5年以下の譲渡を「短期譲渡所得」といいます。短期譲渡所得の場合の税率は以下のとおりです。

・所得税 30%(※2)
・住民税  9%

(※2) 所得税には復興特別所得税(所得税 × 2.1%)が加算されます。(以下同様)

ちなみに、所有期間が5年以下か、5年を超えているかの判定は、売却をした土地・建物の取得日から売却した年の1月1日までの期間で判定します。

所有期間が5年超の場合(長期譲渡所得)

所有期間が5年超の譲渡を「長期譲渡所得」といいます。長期譲渡所得の場合の税率は以下のとおりです。

・所得税 15%
・住民税  5%

このように長期譲渡所得では、かなり税率が抑えられています。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

ここからは、マイホームを売却した場合の特例を見ていきましょう。マイホームを売却した場合、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。すなわち、譲渡所得が3,000万円以下であれば、これに対する所得税、住民税はかかりません。

特例を受けるための要件

税金を軽減できる特例のため、やはり要件があります。見ていきましょう。

① 現在、住んでいる住宅の売却、または
② 以前に住んでいた住宅の売却。この場合には、住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却しなければなりません。

①、②以外にも、「住んでいた住宅を取り壊してその土地を売却した場合」や「災害で滅失した住宅の土地を売却した場合」にも一定の要件のもと、適用が認められています。

注意点として、売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係の場合には、特例の適用は認めれていません。

適用を受けるための手続

この特例を受けるためには確定申告が必要です。確定申告書に必要書類を添付して税務署に提出します。必要書類の一例を以下に挙げます。

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
・戸籍の附票の写しなど(住民票に記載されている住所と売却した物件の所在地が売買契約締結日の前日において異なる場合に必要)

所有期間が10年超の場合の軽減税率の特例

10年を超えて所有していたマイホームを売却した場合、税率が軽減される特例です。この特例は上記の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と併用できます。

特例を受けるための適用要件

マイホームを売却した年の1月1日において、家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていることが要件の1つとなっています。

他の要件としては、親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売却したものでないことや、売却した建物や土地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないことなどが挙げられます。

税率

譲渡所得に乗じる税率は、以下のように軽減されます。

譲渡所得が6,000万円以下の部分 … 所得税 10%、住民税 4%
譲渡所得が6,000万円 超 の 部 分 … 所得税 15%、住民税 5%

ここでの譲渡所得は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用した場合の3,000万円控除後の金額となります。

適用を受けるための手続

この特例を受けるためには確定申告が必要です。確定申告書に必要書類を添付して税務署に提出します。必要書類の一例を以下に挙げます。

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
・売却した家屋やその敷地の登記事項証明書
・戸籍の附票の写しなど(住民票に記載されている住所と売却した物件の所在地が売買契約締結日の前日において異なる場合に必要)

今回は不動産を売却した場合にかかる税金と、それがマイホームだった場合の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と「マイホームの所有期間が10年超だった場合の軽減税率の特例」を見てきました。どちらの特例もマイホームを売却した場合の税負担を減少させることができます。積極的に活用していきましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年10月21日)