この記事について
「マイホームの購入・売却に関する税金 その1」と「その2」をまとめ、加筆したものを2020年12月3日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。
マイホームの〈購入〉に関する税金
多くの人にとって、マイホームを購入することは人生の中で一番大きな買い物だと思います。現金一括で購入することはあまりなく、通常は金融機関から借入れ(住宅ローン)をすることになります。念願のマイホームを手に入れたものの、毎月、元本の返済と金利の支払いが発生するため、家計に少なからず影響があります。
そこで少しでも金利負担の軽減を図るために住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の制度が設けられています。住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合に、納めた税金の一部が戻ってくる制度です。この制度を受けるためには確定申告書を提出することが必要です。
それでは詳しく見ていきましょう。
※ 令和2年中に居住の用に供したものとして説明をしています。また、以下に挙げた要件は主なものになります。
※ 認定住宅の新築等に係る住宅借入金等特別控除の特例については説明を割愛しています。
住宅ローン控除を受けるための要件
税金の還付を受けるという住宅の取得者にとって有利な制度のため、控除を受けるためにはいくつかの要件を満たさなければなりません。
要件
① 自分が居住する住宅の購入であること
② 住宅の床面積が50㎡以上であること
→ 登記簿上記載されている床面積で判定する
→ 床面積の2分の1以上の部分が専ら自分の居住部分でなければならない
③ 住宅取得後 6か月以内に居住し、住宅ローン控除の適用を受けようとする年の12月31日まで引き続き住んでいること
④ 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
→ 親族や知人からの借入金など、対象にならない借入金がある
⑤ 入居した年とその前2年間およびその後2年間(※1)に「居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円の特別控除)」や「特定の居住用財産の買換え等の特例」などを受けていないこと
⑥ 住宅ローン控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
(※1)譲渡の時期によっては「その後3年間」となります。
中古住宅の取得の場合
取得した住宅が中古住宅の場合、以下の要件も加わります。
⑦ 新築後20年以内の中古住宅であること(マンションなどの耐火建築は25年以内)
⑧ 新築後築20年以上の木造などの非耐火建築物については、一定の耐震基準に適合すること
上記 ①~⑧の中で見落としがちなのは「床面積」と「築年数」でしょうか。購入する物件が要件を満たしているか確認しましょう。
住宅ローン控除額
住宅ローン控除を適用すると、いくら控除ができるのでしょうか。
特定取得、特別特定取得とは
早速試算といきたいところですが、まずは「特定取得」と「特別特定取得」の意義からご説明致します。なぜなら(特別)特定取得に該当するかどうかで控除額が異なるためです。
① 特定取得 … 住宅を取得した場合に、建物部分にかかる消費税率が「8%又は10%」であったときの取得をいいます。
② 特別特定取得 … とは、住宅を取得した場合に、建物部分にかかる消費税率が「10%」であったときの取得をいいます。
簡単に言えば、建物部分に消費税がかかる住宅の取得を「特定取得」「特別特定取得」と呼んでいます。
前提として住宅を購入した場合、消費税がかかるときと、かからないときがあります。具体的には売主が「法人」の場合は建物部分に消費税がかかり、売主が「個人」の場合には消費税はかかりません。間違いやすい点として、仲介業者が不動産会社(法人)でも、売主が個人であれば消費税はかかりません。
特別特定取得の場合
特別特定取得の場合、控除できる年数は最大13年となっています。
① 1~10年目 年末残高等×1% 上限40万円
② 11~13年目 年末残高等×1% 上限40万円(一定の算式による上限あり)
「年末残高等」の金額は、金融機関から送られてくる「年末残高証明書」で確認できます。その年末残高が3,000万円の場合、控除額は以下のとおりです。
3,000万円 × 1% = 30万円
例えば、令和2年中に給与所得から源泉徴収された所得税額が50万円ある場合、上記の30万円をこの所得税額50万円から控除することができます。
※ 「住宅の取得等の対価の額又は費用の額」が「年末残高等」の金額よりも少ないときは、その取得等の対価の額又は費用の額となります。また、その取得等の対価の額又は費用の額からは、住宅の取得等に関し一定の贈与を受けた額や補助金等の額を控除します。(以下同様)
特別特定取得に該当しないが、特定取得に該当する場合
この場合、控除できる年数は最大10年となっています。
1~10年目 年末残高等×1% 上限40万円
特別特定取得、特定取得のいずれにも該当しない場合
この場合、控除できる年数は最大10年となっています。
1~10年目 年末残高等×1% 上限20万円
確定申告について
住宅ローン控除を受けるには、確定申告をする必要があります。確定申告書に必要書類を添付して提出しましょう。必要書類の一例は以下のとおりです。
・土地、家屋の登記事項証明書
・売買契約書の写し
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、など
会社員の場合、確定申告が必要なのは1年目だけです。2年目からは会社に必要書類を提出すれば、年末調整のときに控除をしてくれます。
還付される税金について
住宅ローン控除は、納めた「所得税」を限度に控除ができるものです。したがって、「年末借入金残高が3,000万円」で「控除額が30万円(3,000万円 × 1%)」の場合に、納めた所得税が20万円であれば、20万円までしか控除はできません。
ただし、控除しきれなかった金額については、一定額を「住民税」から控除することができます。
新型コロナウイルス感染症等の影響による入居期限の特例
上記の住宅の取得等が特別特定取得に該当する場合においては、通常10年である控除期間が13年に延長される特例が措置されています。ただし、新型コロナウイルス感染症等の影響により、控除の対象となる住宅の取得等をした後、その住宅への入居が入居の期限(令和2年12月31日)までにできなかった場合でも、次の要件を満たすときには、その特例の適用を受けることができます。
① 一定の期日(※)までに、住宅の取得等に係る契約を締結していること
② 令和3年12月31日までに住宅に入居していること
(※) 新築については令和2年9月30日、中古住宅の取得等については令和2年11月30日
今日は住宅ローン控除を見てきました。控除を受ければ家計にその分の余裕が出ると思います。マイホームの購入を検討している方は、住宅ローン控除の要件を満たしているか確認してみましょう。 また、住宅ローン控除は、一定の増改築等の場合にも適用できる場合があります。
それではまた次回よろしくお願いします。
(公開日:2020年10月20日)