個人事業にかかる税金 その1

個人事業にかかる税金 その1(所得税、消費税)

この記事について

「個人事業にかかる税金 その1」と「その2」をまとめ、加筆したものを2020年12月1日に公開しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年10月8日

今日と明日の2日間で、個人事業にかかる税金について見ていこうと思います。すぐに思いつくのは所得税、消費税ですが、実はこれ以外にも個人事業を営んでいるとかかることがある税金があります。主なものは以下のとおりです。

・所得税
・消費税
・住民税
・個人事業税
・償却資産税

これ以外にも車両を所有していたら自動車税や自動車重量税がかかりますね。
気付きにくいものとして、接待にゴルフ場を使ったらゴルフ場利用税、社員旅行で温泉に行ったら入湯税がかかっています。この2つは申告をするわけではないので納税している意識はあまりないかも知れません。

今回はこのうち所得税と消費税を見ていきましょう。

所得税

個人では一番代表的な税金です。

計算方法

暦年(1月~12月)で損益を計算し、もうけ(所得)に対してかかる税金です。
所得税は、所得金額が増えるほど税率が高くなる超過累進税率を採用しているのは有名ですね 。現在の所得税率は5% ~ 45%となっていて、最高税率だと所得税だけで所得の半分程度の税金を納付することになります。
また令和19年までは「復興特別所得税(所得税 × 2.1%)」が所得税に加算されます。

赤字の場合

個人事業が赤字になった場合で、青色申告をしているときは、その赤字を翌年以後3年にわたって繰越せる「純損失の繰越控除」という制度があります。これについては10月5日のブログで触れましたので、以下にその部分を抜粋します。


さらにこの赤字は、赤字が発生した年の翌年以後3年間に渡って繰り越すことができます。分かりやすく説明すると、所得が事業所得のみの場合で、初年度に100万円の赤字が生じたと仮定しましょう。

翌年が30万円の黒字の場合、初年度に生じた赤字100万円のうち、70万円(赤字 100万円-黒字30万円)が控除しきれないことになりますね。そのため、この70万円は翌々年に繰越せます。

翌々年でも黒字から控除しきれないときは、翌々々年まで繰り越すことができます。


このように青色申告をしていると、赤字を繰り越せるため将来の黒字と相殺でき、納税額を少なくできる可能性があります。

消費税

消費税とは、消費一般に広く課税される税金です。消費者が負担した消費税を、事業者がいったん預かり国に納付します。個人事業者の場合、原則として、前々年の売上高が1,000万円を超えていると消費税の納税義務者となり、本年分の申告が必要となります。
消費税の計算方法には「本則課税」と「簡易課税」があります。

本則課税

「預かった消費税額」から「支払った消費税額」を控除して、残額を国に納付します 。本則課税の場合は、「支払った消費税額」のほうが大きいときには、消費税の「還付」を受けることができます。
ちなみに、消費税は赤字でも納付になる場合があります。例えば、給与の支払いが多いため赤字になってしまったような場合です。給与の支払いには消費税がかからないため、給与をいくら支払っても「支払った消費税額」は0円です。そのため、赤字にもかかわらず「預かった消費税額」のほうが大きくなり、納税となることがあります。

簡易課税

簡易課税は、中小事業者の事務負担の軽減を図るために設けられたものです。「支払った消費税額」を把握する必要がなく、「預かった消費税額」のみから納税額が計算できる方法です

具体的には、「預かった消費税」から「預かった消費税 × 割合(みなし仕入率)」を控除して納付額を計算します。この「割合」は業種ごとに税法で定められていて、以下のようになっています。

第一種事業(卸売業)… 90%
第二種事業(小売業など)… 80%
第三種事業(製造業など)… 70%
第四種事業(その他の事業)… 60%
第五種事業(サービス業など)… 50%
第六種事業(不動産業)… 40%

簡易課税の計算方法の特徴として、本則課税のように消費税の「還付」となることはありません。
また、赤字の場合でも「預かった消費税額」があれば納付となります。

いかがでしたでしょうか?
所得税と消費税は資金繰りの点からも、どのくらいの納税が、いつ発生するのか把握しておくことが大切です。
明日は残りの住民税、個人事業税、償却資産税を見ていきましょう。

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年10月8日)