個人事業を開業したときの税務署への提出書類 その2

個人事業を開業したときの税務署への提出書類 その2(給与支払事務所等の開設届出書など)

この記事について

「個人事業を開業したときの税務署への提出書類 その1」から「その3」までをまとめ、加筆したものを2020年11月15日に掲載しています。次のリンクから最新の記事をご覧ください。

個人事業を開業したときの税務署への届出書・申請書

記事作成者:税理士 林 正和(東京都 板橋区) 公開日:2020年10月6日

昨日に引き続き、個人事業を開業したときの「税務署への届出書・申請書の提出」を見ていきたいと思います。

今回は以下の3つを見ていきましょう。
・給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
・所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

それぞれ提出期限がありますので注意してください。

給与支払事務所等の開設等届出書

開業後、初めて従業員(青色事業専従者を含む)を雇うことになった際に提出するものです

開業当初から従業員がいる場合には、「開業届」にその旨を記載すれば、「給与支払事務所等の開設等届出書」の提出は不要となっています。
開業当初は従業員がいなかった場合で、その後、従業員を雇用した場合には「給与支払事務所等の開設等届出書」の提出が必要となります。忘れずに提出しましょう。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

従業員に給与を支払う場合には、その給与から源泉所得税を控除し、控除した月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。ただし、従業員が常時10人未満である場合など事業規模が比較的小さい場合には、毎月納付するのは事務負担が大きいですよね。そのため、年に2回(1月20日、7月10日)、半年分をまとめて国に納付できる特例が定められています

この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。この特例を受けたほうが事務負担が軽減されるため、通常は提出することをおすすめしています。

(適用時期)
「この申請書を提出した月に支給される給与から控除された源泉所得税」については翌月10日が納期限となります。「申請書を提出した次の月に支給される給与から控除される源泉所得税」から、この特例が適用されるので注意しましょう。

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

「所得税の棚卸資産の評価方法」と「減価償却資産の償却方法」の届出書が1つになっているものです。

まずは、棚卸資産の評価方法について見ていきます

商品を販売する事業の場合を考えてみましょう。
この場合、商品の仕入れをしただけでは必要経費に計上できず、商品が売れたことによって初めて必要経費に計上できます。言い換えれば、期末に在庫として残っている商品については、必要経費にできません。この期末に残っている在庫の金額の算定方法を定めるのが、この届出書になります。

この算定方法はいくつか認められているのですが、届出書を提出しなければ「最終仕入原価法」になります。これは、期末(12月31日)に最も近い時点で取得した商品の1単位あたりの取得価額で計算する方法です。個別法や先入先出法など他の評価方法を選択する場合には届出書を提出しましょう。

次に、減価償却資産の償却方法を見ていきましょう
前日のブログでもお話しましたが、10万円以上の資産(パソコン、プリンター、エアコンなどの器具備品、機械など)を購入した場合は、原則として、購入した年に全額を経費計上することはできずに、減価償却(※)を行うことになります。

※ 減価償却とは
例えば、1月に20万円のパソコンを買った場合には、4年に渡って毎年5万円ずつ経費に計上していきます。このようにその資産の耐用年数(国が定めたその資産を使用できる年数)によって、毎年、経費計上することを減価償却といいます。

例外として、青色申告者には30万円未満の資産については購入した年に全額を経費計上することができる、「少額減価償却資産の特例」がありました。

償却方法にはいくつかあり、「減価償却資産の償却方法の届出書」はどの償却方法を選択するのかを届出るものになります。償却方法には定額法、定率法、生産高比例法などがあります。必要に応じて選択しましょう。ちなみに届出書を提出しなければ「定額法」になります。これは、毎年の償却額(経費計上額)が均等となる方法です。

明日は以下の4つの届出書を見ていきましょう。

・消費税課税事業者選択届出書
・消費税課税期間特例選択届出書
・消費税簡易課税制度選択届出書
・所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書

それではまた次回よろしくお願いします。

(公開日:2020年10月6日)